サスティナブルでヘルシーなうまい日本の魚プロジェクト

Sustainable, Healthy and “Umai” Nippon seafood project

サスティナブルでヘルシーな
うまい日本の魚プロジェクト

サワラ(京都府)

スズキ目、サバ亜目、サバ科に属し、学名はScomberomorus niphonius。体は細長くて側偏する。体色は、金属光沢をもち、背面は淡灰青色、腹面は銀白色。強く小刀状の歯をもつ。鰾をもたない。

分布

東シナ海から黄海、渤海、さらに北海道以南の日本海及び瀬戸内海を中心とした太平洋沿岸域に分布する。評価対象の東シナ海系群は、東シナ海から日本海に分布する。

生態

日本海沿岸で漁獲されたサワラの尾叉長組成から判断すると、満1歳で尾叉長45cm前後、満2歳で65cm前後に成長する。成長には雌雄差があり、2歳以上において雌は雄に比べ成長が早い。寿命は、6歳程度と推定される。雌雄ともに1歳魚の一部が成熟を開始し、2歳魚以上では大部分が成熟する。東シナ海、黄海のサワラの産卵期は3~6月である。

利用

漁獲量が少なく、美味で高価である。刺身、照焼、塩焼等にする。

漁業

まき網、定置網、ひき縄等の釣り漁業によって漁獲される。東シナ海では主に大中型まき網漁業、日本海では大型定置網漁業によって漁獲される。


あなたの総合評価

資源の状態

 サワラ東シナ海系群の生物学的、生態学的情報は十分ではないが利用可能である。漁獲量と漁業実態のデータは一部について長期間利用可能である。水揚物の生物調査は一部について行われている。資源評価方法は日韓の漁獲量、及び東シナ海の大中型まき網と日本海大型定置網の単位努力量当たり漁獲量(CPUE)に基づいてなされている。資源評価結果は公開の会議で外部有識者を交えて協議され毎年公表されている。資源の水準・動向は高位、横ばいであるため、現状の漁獲圧が資源の持続的生産に与える影響や資源枯渇リスクは低いと考えられる。漁業管理方策は策定されていないため、評価結果、及び予防的措置は資源管理に反映されていない。資源は環境変化に影響を受けていると考えられるが、資源評価には考慮されていない。外国による漁獲の影響は、韓国についてのみ考慮されている。



生態系・環境への配慮

 日本海西部においてサワラを漁獲する漁業による生態系への影響の把握に必要となる情報、モニタリングの有無について、当該海域はマアジ、ブリ等の重要な漁業対象種の生育、索餌海域に当たり、分布域と水温の関係等に関する研究例は豊富であり、サワラについても2000年以降情報が蓄積されている。当該海域では海洋環境及び漁業資源に関する調査が水産研究・教育機構の調査船、府県の調査船等によって毎年実施されている。行政機関により府県別・漁業種類別・魚種別漁獲量等は調査され公表されているが、混獲や漁獲物組成に関する情報は十分得られていない。
 評価対象種を漁獲する漁業による他魚種への影響について、定置網の混獲利用種であるマイワシ、ブリ、マアジについては資源はいずれも懸念される状態になかった。評価対象となる混獲非利用種はないと考えられた。対象海域に分布する希少種のうち、アカウミガメに中程度の影響リスクが認められたが全体としては低いと考えられた。
 食物網を通じたサワラ漁獲の間接影響については、日本海におけるサワラの捕食者は知られていない。サワラの餌生物は主にカタクチイワシ、マアジとされるが、カタクチイワシの資源状態は懸念される状態であった。競争者としては魚食性のブリ、クロマグロが存在するが、クロマグロは日本海西部での漁獲は安定しているものの系群全体での資源状態が懸念される状態であった。
 漁業による生態系全体への影響については、多くの魚種で漁獲量の減少が認められ、スルメイカやさめ類等の減少に加え、近年のマイワシの漁獲量増加が漁獲物平均栄養段階(MTLc)の低下に寄与していると考えられた。水質への影響については、対象漁業からの排出物は適切に管理されており、影響は認められないと判断された。定置網による大気環境への影響については、ほとんどないと判断した。



漁業の管理

 サワラは、定置漁業では評価対象各府県の海洋生物資源の保存及び管理に関する計画において、現状の漁獲努力量を増加させることがないよう規定されてきた。改正漁業法下の資源管理方針においても、特定水産資源の漁獲可能量による管理以外の手法として漁獲努力量による管理を合わせて行うこととされ、実質当該魚種に係る努力量管理ともなっている。各府県の資源管理指針においても、自主的措置として休漁が取り組まれてきた。本系群の資源状態は良好であることからインプット・コントロールは適切に働いていると考えられる。テクニカル・コントロールについても、関係府県の資源管理指針で各種の方策が規定され取り組まれている。海底環境に与える影響は無視でき、ほかの生態系への直接影響も知られていない。漁業者の手により海浜清掃、森づくり、藻場保全等が活発に実施されている。生息域全体をカバーするサワラの国際的な資源管理体制はないが、我が国に関しては本系群の資源管理は日本海・九州西広域漁業調整委員会が所掌しており生息域をカバーする管理体制が確立している。府県の取締当局が監視業務にあたっており、水揚げ港、市場での漁協職員や関係漁業者等による監視も十分可能である。各府県漁業調整規則、海区漁業調整委員会指示違反等については漁業法により懲役や罰金または拘留や科料に処せられ、罰則規定としては十分に有効と考えられる。適用についてみると、定置漁業権は5年ごとに更新されるが、免許更新の際には各府県の海区漁業調整委員会に内容が諮られる。管理施策の結果を見て次の取り組みを決める順応的管理のシステムが構築されている。
 定置網漁業者は明確に特定され、ほとんどが各府県の定置漁業協会に属し地元の漁業協同組合にも所属し、組織化がなされている。上部組織である日本定置漁業協会は水産資源の管理の強化等を指導しており、日本海定置漁業連絡協議会における決議等により漁業者組織が管理に影響力を有していると考えられる。各府県漁業協同組合、漁業協同組合連合会は販売、購買、サワラのブランド化、加工など、個別の漁業者では実施が困難な経営上の活動を行い水産資源の価値向上に務め、収益性改善の実証事業、抜本的構造改革事業にも取り組んでいる。自主的管理への取り組みとして漁協内、及び定置漁業協会での会合参加が必要であり、参画を評価できる。公的管理へも漁業協同組合役員等が参画している。各府県には漁業者に加え遊漁者、海洋性レクリエーション代表が参画する海面利用協議会が設置されており、漁業と海洋性レクリエーションとの海面利用や海面における漁業と遊漁との調整に関する事項の調査検討をしている。資源管理指針に基づく各府県の資源管理計画における意思決定についてみると、漁業者及び関係団体が指針で定められた資源管理協議会において評価・検証、目標や管理措置の内容の見直しに参画できておらず、PDCAサイクルを回す本来の趣旨に沿っていないのではないかと危惧される。



地域の持続性

 本系群は、大型定置網(石川県、福井県、京都府、島根県)で大部分が獲られている。漁業収入はやや高位で推移し、収益率のトレンドは中程度で、漁業関係資産のトレンドは低かった。経営の安定性については、収入の安定性、漁獲量の安定性ともに中程度であった。漁業者組織の財政状況は高かった。操業の安全性は高かった。地域雇用への貢献は高い。労働条件の公平性については、漁業及び加工業で特段の問題はなかった。買受人は各市場とも取扱数量の多寡に応じた人数となっており、セリ取引、入札取引による競争原理は概ね働いている。取引の公平性は確保されている。卸売市場整備計画等により衛生管理が徹底されており、 仕向けは中・高級食材である。先進技術導入と普及指導活動は概ね行われており、物流システムは整っていた。水産業関係者の所得水準はやや高い。地域ごとに特色ある漁具漁法が残されており、伝統的な加工技術や料理法がある。



健康と安全・安心

 サワラには、視覚障害の予防に効果があるビタミンA、細胞内の物質代謝に関与しているビタミンB2、体内の酸化還元酵素の補酵素として働くナイアシン、血圧を下げる効果を有するカルシウム等さまざまな栄養機能成分が含まれている。脂質には、血栓予防等の効果を有するEPAや脳の発達促進や認知症予防等の効果を有するDHAが含まれている。また、魚介類のなかでもタンパク質含量の多い魚である。旬は秋から冬である。利用に際しての留意点は、ヒスタミン中毒防止と生食によるアニサキス感染防止である。ヒスタミン中毒は、筋肉中に多く含まれるヒスチジンが、細菌により分解、生成したヒスタミンによるものであるため低温管理が重要である。アニサキスは、魚の死後時間経過にともない内臓から筋肉へ移動するため、生食には新鮮な魚を用いること、内臓の生食はしない、冷凍・解凍したものを刺身にする等で防止する。
引用文献▼ 報告書