クロマグロは重要な水産種であり、資源生態に関する調査研究は古くから積極的に進められてきた。分布・回遊、年齢・成長・寿命、成熟・産卵に関する知見は、学術論文や報告書として豊富に蓄積されており、資源評価の基礎情報として利用可能である。漁獲量・努力量データの収集、定期的な科学調査、漁獲実態のモニタリングも毎年行われている。このように定期的に収集される漁業調査データに基づき、四半期別・漁法別漁獲量、各漁業による漁獲物の体長頻度データ、及び標準化された資源量指数が推定され、統合モデルを使用した資源評価が2年ごとに実施されている。資源評価の内容は北太平洋まぐろ類国際科学委員会(ISC)で検討するとともに、「太平洋クロマグロの資源・養殖管理に関する全国会議」で参加者に説明され、算定されたABC(生物学的許容漁獲量)は、水産政策審議会を通じてTAC(漁獲可能量)設定などの漁業管理に反映される仕組みが確立されている。
最近年(2016)年の親魚資源量は約2.1万トンであり、2010年の歴史的最低水準(約1.2万トン)から徐々に増加している。
2016年の親魚資源量について、一般的に用いられている管理基準値と比較すると「減り過ぎ」、漁獲圧も一般的に用いられている管理基準値と比較すると「獲り過ぎ」の状態であるとされる。ISC(北太平洋まぐろ類国際科学委員会)は、WCPFCおよびIATTC(全米熱帯まぐろ類委員会)の現行の保存管理措置に基づく漁獲シナリオでの親魚資源の将来予測を実施し、低水準の加入が今後継続すると仮定した場合でも、現行管理措置の下では、2024年までに暫定回復目標である歴史的中間値以上に親魚資源が回復する可能性が98%であることを示した。中西部太平洋水域においては、2014年のWCPFCで、1) 親魚資源量を2024年までに、少なくとも60%の確率で歴史的中間値まで回復させることを暫定回復目標とする、2 30kg未満の小型魚の漁獲量を2002~2004年平均水準から半減させる、3) 30kg以上の大型魚の漁獲量を2002~2004年平均水準から増加させない、等を内容とする保存管理措置が採択されている。