東シナ海は、我が国周辺の多獲性浮き魚類の重要な産卵海域であることから農林水産省農林水産技術会議委託プロジェクト研究の対象海域となるなど海洋環境と生態系、魚類生産に関する研究は豊富。海洋環境及び漁業資源に関する調査が水産機構の調査船、沿岸各県の調査船によって高い頻度で実施されている。評価対象漁業による魚種別漁獲量は把握される体制にあるが、混獲非利用種や希少種について、漁業から情報収集できる体制は整っていない。
大中型まき網での混獲利用種であるゴマサバ、マアジ、マイワシ、ブリ、中・小型まき網混獲利用種のゴマサバ、マイワシ、ウルメイワシ、マアジについて資源状態は懸念される状態にないが、中・小型網まき網混獲種であるカタクチイワシについては資源は懸念される状況である。混獲非利用種については、両漁業とも情報がなかった。当該海域に分布する環境省レッドリスト掲載種に対する両漁業のPSA評価はともに全体では低リスクであったが、アカウミガメ、アオウミガメについは中程度リスクと評価された。
マサバ捕食者としてカツオ、サワラ、ハンドウイルカ、イワシクジラ、シャチ、カマイルカ、コビレゴンドウ、スナメリ、ミンククジラ、カツオドリ、アジサシ、ウミネコ、ウトウが挙げられる。これらの資源動向に対して、当該漁業が要因となっている可能性は低いが、判断のためのデータが乏しい種があった。餌生物としては2005年までのデータであるが1960年代以降動物プランクトンの増加現象が見られた。マサバ捕食圧の低下との因果関係は明確ではないが、定向的変化と捉えられた。競争者であるゴマサバ、マアジの資源状態は直ちに懸念される状態にはなかった。
大中型まき網、中・小型まき網とも漁業の影響強度は低く、生態系特性に不可逆的な変化は起こっていないと考えられた。まき網は基本的には網丈より深い水深帯で操業される表中層漁業であり、まき網の着底による影響は小さいと考えられる。対象漁業からの排出物は適切に管理されており、水質環境への負荷は軽微であると判断された。大中型まき網、中・小型まき網は我が国の漁船漁業の中では燃油消費量や温暖化ガスの環境負荷量が比較的小さい漁業であると考えられる。