ゴマサバは重要な水産種であり、資源生態に関する調査研究は古くから進められてきた。分布・回遊、年齢・成長・寿命、成熟・産卵に関する知見は、学術論文や報告書として蓄積されており、資源評価の基礎情報として利用可能である。漁獲量・努力量データの収集、漁獲実態のモニタリング、科学調査も毎年行われている。このように定期的に収集される漁業データに基づき、年齢別漁獲尾数が推定され、齢構成資源動態モデルを使用した資源評価が毎年実施されている。資源評価の内容は公開の場を通じて利害関係者の諮問やパブリックコメントを受けて精緻化される。
最近年の漁獲係数Fをチューニングで推定したコホート解析(tuned VPA)により各漁期年の年齢別資源尾数が1973年から推定されている。当該解析手法については複数の外部有識者(大学の専門家)によるチェックを毎年受けることで客観性を担保している。1992年以降の24年間の親魚量および資源量の推移から資源水準を判断し、親魚量33千トン(Blimit)以上を中位水準、それ未満は低位水準、資源量が上位3分の1以上の場合を高位水準とした。2015年の資源量は上位の3分の1以下で、親魚量(45千トン)はBlimitを上回っていることから、2015年の資源水準を中位とした。また最近5年間(2011~2015年)の資源量の推移から、動向を減少と判断した。
現状の漁獲圧(漁獲係数Fcurrent)を最近3 年(2013~2015 年)の平均と定義すると、Fcurrent はFmedよりわずかに高い。算定されたABC(生物学的許容漁獲量)は、水産政策審議会を通じてTAC(漁獲可能量)設定などの漁業管理に反映される仕組みが確立されている。