サスティナブルでヘルシーなうまい日本の魚プロジェクト

Sustainable, Healthy and “Umai” Nippon seafood project

サスティナブルでヘルシーな
うまい日本の魚プロジェクト

漁業の管理

サワラ(山口県 瀬戸内海)

管理施策の内容

  さわら流刺網は知事許可漁業であるが、国による漁獲努力可能量制度(TAE)の発足により2012年から漁業者、府県、水産研究・教育機構、瀬戸内海漁業調整事務所で組織したさわら検討会議で管理施策の検討が行われてきた。さわら検討会議では、漁期の規制等を検討して各府県の資源管理指針に反映させ、TAEの水産政策審議会への諮問も引き続き行ってきた。はえ縄(徳島県)、ひき縄(兵庫県、山口県)、釣り(愛媛県)についても、各府県資源管理指針において、休漁、サワラを目的とした操業禁止期間の設定を自主的管理措置として実施する必要があるとしており、各漁業ともにインプット・コントロールが実施されている。テクニカル・コントロールとしては、小型魚の保護を目的とし、各府県漁業調整規則による流刺網の目合いの規制のほか、2012年からのサワラ広域資源管理のなかで自主的な漁具の規制を各府県の資源管理指針に反映させた。はえ縄、ひき縄、釣りについても各府県資源管理指針で漁獲物規制(小型魚の再放流)に取り組む必要があるとされている。種苗放流効果を高めるため、さわら検討会議、サワラ瀬戸内海系群資源管理漁業者協議会において漁獲努力量削減、小型魚の漁獲規制等の措置が取り組まれている。評価対象の流刺網、はえ縄、ひき縄、釣りは、着底漁具ではないため、海底環境に与える影響は無視でき、ほかの生態系への直接影響も知られていない。

引用文献▼ 報告書

執行の体制

 流刺網等の許可漁業は府県の管轄であるが、漁業者、関係府県、水産機構、瀬戸内海漁業調整事務所で組織したさわら検討会議が取り組むべき施策を各府県資源管理指針、TAEの設定等に反映させており、一元的な管理体制が確立している。資源管理計画に基づく管理措置の履行確認は各府県に設置した資源管理協議会が行っている。取り締り・監視は各府県漁業監督吏員、取締船のほか、瀬戸内海漁業調整事務所が協力してあたっている。水揚げは基本的には地元漁協など、地域の地方卸売市場になされ、漁獲物のサイズの確認は漁協職員や漁業者間でなされる。許可漁業に関する公的な規制の違反には、各府県漁業調整規則に基づき罰則が科せられる。資源管理指針に基づく自主的な規制については、地域共同体による慣習的制裁が機能していると考えられる。流刺網のTAEの設定については水産政策審議会で審議されるため毎年の更新が可能となっており、管理は順応的であると考えられる。自主的な資源管理計画については、策定後4年を経過した次の年度に計画の内容が適切か否か等について資源管理協議会で評価・検証を行うこととされている。

引用文献▼ 報告書

共同管理の取り組み

 知事許可漁業であるさわら流刺網とひき縄漁業者、及び自由漁業である一部のひき縄、はえ縄、釣りの漁業者は実質全員が漁協組合員と考えられるため特定されている。評価対象漁業の代表者は本系群の資源管理を統括しているさわら検討会議のメンバーであることから漁業者組織はサワラ資源管理に影響力を有している。各府県の漁業協同組合、漁業協同組合連合会は、共販、流通・加工、直販、サワラのブランド化など、個別の漁業者では実施が困難な経営上の活動を実施し水産資源の価値の最大化に努めている。自主的管理のためのさわら検討会議など、漁協外部の会議への参加、資源管理計画遂行のための、漁協内部での会合を合わせると漁業者組織代表者の会議参加日数は年間12日を越えると考えられる。公的管理のための各府県の海区漁業調整委員会、瀬戸内海広域漁業調整委員会等の会議にも関連の漁業者代表が適切に参画している。各府県の海区漁業調整委員会、海面利用(調整)協議会には幅広い利害関係者が参画している。サワラ広域資源管理に関しては、漁業者、行政、研究者(資源評価、種苗生産関係)が連携して計画を立て、資源評価結果に基づき効果を評価し見直しが可能な体制が整っている。種苗放流の費用負担については、瀬戸内海海域サワラ栽培漁業広域プランにおいて放流による効果を実証し、効果に応じた経費の負担配分が検討されている。

引用文献▼ 報告書