マイワシは重要な水産種であり、資源生態に関する調査研究は古くから積極的に進められてきた。分布・回遊、年齢・成長・寿命、成熟・産卵に関して学術論文や報告書が豊富に蓄積されており、資源評価の基礎情報として利用可能である。漁獲量・努力量データの収集、定期的な科学調査、漁獲実態のモニタリングも毎年行われている。このように定期的に収集される漁業データ、科学調査データに基づき、年齢別漁獲尾数が推定され、齢構成資源動態モデル(tuned VPA)を使用した資源評価が毎年実施されている。資源評価の内容は公開の場を通じて利害関係者の諮問やパブリックコメントを受けて精緻化され、最終的な評価結果及び次年度のABC(生物学的許容漁獲量)は、水産政策審議会通じて科学的提言としてTACや団体などの漁業管理に反映される仕組みが確立されている。
最近年の漁獲係数Fをチューニングで推定したコホート解析(tunedVPA)により各魚期年の年齢別資源尾数が1976年から推定されている。当該解析手法については複数の外部有識者(大学の専門家)によるチェックを毎年受けることで客観性を担保している。
1976 年以降の39年間の親魚量および資源量の推移から資源水準を判断し、親魚量22.1万トン(Blimit)以上を中位水準、それ未満は低位水準とした。また、資源が増大し成長などに密度効果が見られた1977 年以降1980年代の資源量500万トン以上を高位水準とした。2014 年の親魚量は54.8万トンとBlimit を上回っていることから、資源水準は中位と判断される。過去5 年間(2010~2014 年)の資源量の推移から資源動向は増加と判断される。
現状の漁獲圧(漁獲係数Fcurrent)は、資源を現状維持するとされる管理基準FmedやFmsy の代替値に用いられるF0.1より低いことからその水準は高くないと判断される。
資源評価結果から算定されたABCを基に毎年TACが決定され配分される仕組みが定着している。