サスティナブルでヘルシーなうまい日本の魚プロジェクト

Sustainable, Healthy and “Umai” Nippon seafood project

サスティナブルでヘルシーな
うまい日本の魚プロジェクト

メカジキ(東京都)

スズキ目、サバ亜目、メカジキ科に属し、学名はXiphias gladius。体は長紡錘形。眼がやや大きい。吻は縦扁で極めて長い。幼魚の両顎に歯があるが、成長とともに消失する。尾部に顕著な隆起線が1条ある。腹鰭はない。背鰭は大きく離れる。鱗はない。体色は背面が暗青色で褐色を帯び、腹面は白色。体側はやや黄味を帯びる。

分布

夏には北緯40~45度の餌が豊富で冷たい水域に、冬には北緯10~20度の亜熱帯水域へと移動する季節的な南北回遊を行っている。

生態

雌の方が成長が速く大型になり、2 m以上の個体はほとんど雌である。寿命は12歳。50%成熟は雄で3歳、雌で6歳と報告されている。

利用

刺身、寿司で生食されるほか、切り身はステーキや煮付けなどに利用される。

漁業

 日本・台湾・韓国・米国のはえ縄、日本の大目流し網・定置網が主な漁業である。
 近年の漁業種別漁獲量割合は、はえ縄が全体の8割以上を占め、次いで大目流し網等が多い。大目流し網による漁獲量は1980年代に1,000トンを超える時期があったが、1992年の公海域における流し網のモラトリアム(操業停止)以降、操業水域が我が国200海里内に限られたため漁獲量は急激に減少した。


あなたの総合評価

資源の状態

 メカジキは重要な水産種であり、資源生態に関する調査研究は古くから進められ知見が得られている。漁獲量・努力量データの収集、科学調査、漁獲実態のモニタリングも毎年行われている。漁業調査データに基づき、各国の漁業種別漁獲量と資源量指数が推定され、統合モデル(SS3)を使用した資源評価が3年ごとに実施されている。中西部北太平洋系群の資源は乱獲状態になく、漁獲も過剰漁獲状態ではないとされた(水準・動向は高位・安定)。このことから、これまでWCPFC(中西部太平洋まぐろ類委員会)北小委員会では、管理措置導入の議論は行われていなかったが、2018年9月のWCPFC北小委員会において、本資源の管理目標について、資源量を最大持続生産量を産出する水準に維持しつつ漁業を発展させることを目的とすることが合意された。ただし限界管理基準については、合意に至らなかった。



生態系・環境への配慮

 生態系への影響の把握に必要となる情報、モニタリングの有無について、中西部太平洋における生態系と混獲の問題、はえ縄による混獲情報などが取りまとめられている。当該海域において熱帯まぐろ類の仔稚魚調査、動物プランクトン採集、海洋環境調査が不定期的に実施されている。科学オブザーバー計画が確立され、はえ縄やまき網による漁獲物情報を取得する体制が部分的に整っている。
 評価対象種を漁獲する漁業による他魚種への影響として、はえ縄で同時に漁獲されるビンナガ、キハダ、メバチ、ヨシキリザメ、クロトガリザメの中でクロトガリザメについては資源が懸念される状態であった。混獲非利用種に対するPSA評価では、はえ縄の潜在的なリスクはアオウミガメ、アカウミガメ、タイマイ、ヒメウミガメでは高く、オサガメ(表層)、アカマンボウ、シイラなどでは中程度と判断された。環境省指定の絶滅危惧種のうち、評価対象水域と分布域が重複する種についてPSAでリスク評価を行った結果、全体としてリスクは低かったが、アカウミガメ、アオウミガメ、タイマイのリスクについては高いと判断された。
 食物網を通じたメカジキ漁獲の間接影響、漁業による環境への影響として、メカジキは外洋の表層生態系において、ほぼ最高位捕食者に位置すると考えられる。餌生物として挙げられるカツオ、ビンナガ、シイラ、ツムブリ、イカ類、小型浮魚類については資源状態の懸念は見られなかった。メカジキ同様に高次捕食者と位置づけられる魚種の資源水準・資源動向を見ると一部の魚種に減少傾向が見られた。漁獲物の平均栄養段階水準と、栄養段階が高い種の多様性と生物量の年変動から、重篤ではないが対象漁業による生態系特性への影響が懸念された。当該海域における日本漁船による海洋汚染や廃棄物の投棄についての違反報告はなかった。単位漁獲量あたりCO2排出量について、まぐろはえ縄漁業は我が国漁業の中では高い数値となっているため、排出ガスによる大気環境への悪影響が懸念された。



漁業の管理

 WCPFC、IATTC(全米熱帯まぐろ類委員会)側でも、資源は高位で安定か増加とされている。メカジキを漁獲する遠洋、近海まぐろはえ縄漁業は大臣許可漁業である。インプット・コントロールが成立している。両漁業は、農林水産大臣がトン数や海域を公示し、申請を受けて許可証を発給している。採捕してはならない魚種及び海亀や海鳥の保存措置のため漁具の制限が決められている。燃油使用量の削減、抑制を漁業者団体が主導した。水産庁国際課かつお・まぐろ漁業室が中心となって、WCPFC(中西部太平洋まぐろ類委員会)、IATTC(全米熱帯まぐろ類委員会)とISC(北太平洋まぐろ類国際科学委員会)と連携している。メカジキを漁獲する大臣許可遠洋、近海はえ縄漁業は、水産庁国際課かつお・まぐろ漁業室で指導監督している。遠洋、近海まぐろはえ縄漁業では、農林水産大臣が命じたときはオブザーバーを乗船させなければならない。ポジティブリストの掲載漁船で漁獲されたことの証明書等による輸入事前確認手続きは水産庁で一元化された。管理機関等による管理目標、資源評価、管理措置等に従って資源管理指針を見直し、省令等を改定してきたことを、順応的管理に準ずる施策と評価した。漁業者は業種別漁業協同組合、協会等の団体に所属し、多くの近海まぐろはえ縄漁業者は沿海漁業協同組合にも属している。資源管理指針の下で漁業者は自主的に休漁等に取り組んでいる。漁業者団体が課題をもって改革計画や実証事業を主導してきており、日本かつお・まぐろ漁業協同組合は日本かつお・まぐろ漁業協同株式会社を組織し、販売事業に当たっている。水産政策審議会資源管理分科会には利害関係者も参画しており、WCPFCの年次会合や科学委員会等へもNGOが参加している。



地域の持続性

 北太平洋のメカジキは、遠洋まぐろはえ縄漁業(岩手県、宮城県、福島県、東京都、神奈川県、静岡県、三重県、高知県、鹿児島県)、近海まぐろはえ縄漁業(宮城県、高知県、宮崎県)で、全漁獲の大部分を占めている。漁業収入のトレンドは中程度で、収益率は低く、漁業関係資産は高かった。経営の安定性については、収入の安定性、漁獲量の安定性ともに中程度であった。漁業者組織の財政状況は、未公表の組織が多かった。操業の安全性は高く、地域雇用への貢献は高い。労働条件の公平性は漁業で特段の問題はなかった。買い受け人は、各市場とも取扱数量の多寡に応じた人数となっており、セリ取引、入札取引による競争原理は概ね働いている。卸売市場整備計画により衛生管理が徹底され、仕向けは加熱用食材が主である。労働条件の公平性については、加工・流通でも特段の問題は無く、本地域の加工流通業の持続性は高い。先進技術導入と普及指導活動は行われており、物流システムも整っていた。水産業関係者の所得水準は比較的高い。またメカジキは地域ごとに特色ある漁具漁法や伝統的な加工技術、料理法があり、現在まで引き継がれてきている。



健康と安全・安心

 メカジキには、体内の酸化還元酵素の補酵素として働くナイアシン、骨の主成分であるカルシウムやリンの吸収に関与しているビタミンD、高血圧予防に効果があるカリウム、抗酸化作用を有するセレン、メチル水銀の解毒作用など様々な機能を有するといわれているセレノネインなど様々な栄養機能成分が含まれている。脂質には、血栓予防などの効果を有するEPAと脳の発達促進や認知症予防などの効果を有するDHAが含まれている。また、アミノ酸スコアが100といった良質のタンパク質が豊富である。旬は秋から冬である。利用に際しての留意点は、ヒスタミン中毒防止と生食によるアニサキス感染防止である。ヒスタミン中毒は、筋肉中に多く含まれるヒスチジンが、細菌により分解、生成したヒスタミンによるものであるため低温管理が重要である。冷凍物では、低温下で解凍・保管が必要である。アニサキスは、魚の死後時間経過に伴い内臓から筋肉へ移動するため、生食には新鮮な魚を用いること、内臓の生食はしない、冷凍・解凍したものを刺身にするなどで防止する。メカジキは、他の魚種に比べメチル水銀を蓄積しやすいため、妊婦は、厚生労働省より公表されている目安量を基に摂取する必要がある。
引用文献▼ 報告書