サスティナブルでヘルシーなうまい日本の魚プロジェクト

Sustainable, Healthy and “Umai” Nippon seafood project

サスティナブルでヘルシーな
うまい日本の魚プロジェクト

メバチ(宮崎県)

メバチは、スズキ目、サバ亜目、サバ科、マグロ属に属し、学名はThunnus obesus。体は紡錘形で著しく肥大する。体高は高い。頭部と眼は大きい。牙状歯はない。胸鰭は長い。全身は小円鱗におおわれる。体色は背面では黒青色、腹面は白色を帯びる。背鰭は灰色でその縁辺や上端は副鰭とともにわずかに黄色を帯びる。

分布

メバチは熱帯域から温帯域にかけて広く分布する。若齢で小型のメバチはもっぱら表層に分布するが、成長するにつれてより水深の深い層にも分布するようになる。

生態

産卵は水温24℃以上の水域で周年行われる。10歳で尾叉長151cmに達し、寿命は10~15年と考えられている。主要な餌生物は魚類、甲殻類及び頭足類である。サメ類、海産哺乳類及びカジキ類によって捕食されている。

利用

はえ縄の漁獲物は冷凍及び生鮮(刺身、寿司等)、まき網の漁獲物は缶詰をはじめとする加工品として主に利用される。量的には刺身マグロのほとんどをメバチが占めており、日本の刺身マグロ文化を支えている。

漁業

 はえ縄、まき網及び竿釣りが主な漁業である。
 はえ縄は1950年代にキハダを主要対象種として発展したが、1970年代半ばにメバチを主要な対象とするようになった。まき網は、カツオを主対象としつつ、キハダも混獲する漁業として1970年代半ばに始まった。1970年代までは、はえ縄が漁獲の9割を占めていたが、その後、まき網によるメバチの漁獲量が増加した。2017年の総漁獲量は12.9万トン(予備集計)で、内訳は、まき網が45%、はえ縄が45%、竿釣りが1%、そのほか9%である。


あなたの総合評価

資源の状態

 メバチの資源生態に関する調査研究は積極的に進められており、蓄積された成果は資源評価の基礎情報として利用可能である。漁獲量・努力量データの収集、定期的な科学調査、漁獲実態のモニタリングも毎年行われている。定期的に収集される漁業調査データから、四半期別・漁法別漁獲量、各漁業による漁獲物の体長頻度データ、及び標準化された資源量指数が推定され、Multifan-CLを使用した資源評価がおおよそ3年ごとに実施されている。近年の産卵資源量は限界管理基準値(LRP)を上回り、資源は中位・横ばいと判断された。太平洋共同体(SPC)の科学専門グループが資源評価を行い、中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)科学委員会が管理方策に関する勧告を行い、WCPFC年次会合において管理方策が採択される仕組みが機能している。2018年12月のWCPFC第15回年次会合において、2018年に採用されたメバチ・キハダ・カツオの保存管理措置を2019、2020年にも適用することが合意された。



生態系・環境への配慮

 生態系への影響の把握に必要となる情報、モニタリングの有無について、中西部太平洋においては生態系と混獲の問題、はえ縄による混獲情報などが取りまとめられている。熱帯まぐろ類の仔稚魚、動物プランクトン及び海洋環境の調査が不定期的に実施されている。科学オブザーバー計画が確立され、はえ縄やまき網による漁獲物情報を取得する体制が部分的に整っている。
 評価対象種を漁獲する漁業による他魚種への影響として、混獲利用種の資源状態は、まき網では懸念される状態になかった。はえ縄ではクロトガリザメの資源状態が懸念された。混獲非利用種へのリスクは、まき網でクロトガリザメのリスクが中程度とされた以外は軽微であった。はえ縄では海亀類でリスクが高いと考えられた。魚類については漁獲統計がない種が多かった。環境省指定の絶滅危惧種に対して、まき網、はえ縄とも全体平均ではリスクは低かったが、海亀類についてまき網ではリスクが中程度、はえ縄では高程度と判断された。
 食物網を通じたメバチ漁獲の間接影響、漁業による環境への影響として、メバチの捕食の関係にある種のうちマカジキ、クロトガリザメ、ヨゴレの資源状態が懸念される状態であった。メバチの餌生物の情報はほとんどなかった。競争者のうちクロトガリザメの資源状態が懸念される状態であった。漁獲物の平均栄養段階水準と、栄養段階が高い種の多様性と生物量の年変動から、重篤ではないが対象漁業による生態系特性への影響が一部で懸念された。当該海域における日本漁船による海洋への汚染や廃棄物の投棄についての違反報告はなかった。単位漁獲量あたりのCO2排出量は、大中型かつおまぐろ1そうまき網では比較的低いが、まぐろはえ縄漁業は我が国漁業の中でも高い排出量となっており、排出ガスによる大気環境への悪影響が懸念された。



漁業の管理

 メバチ中西部太平洋を主に漁獲する遠洋、近海まぐろはえ縄漁業は、大臣許可漁業であり、インプット・コントロールが成立している。WCPFCは、はえ縄漁業による我が国の漁獲枠を2016年の12,610トンから2017年の18,265トンに増枠した。資源状態は中位、安定であるものの、近年の管理措置は暫定合意とされており、インプット・コントロール等が資源を有効に制御していると断言はできない。漁船トン数や海域を示されて操業している。メバチ資源では、FAD(集魚装置)操業の運用に関心を持たれているが、FADについては禁止期間が短縮された。採捕してはならない魚種・海亀や海鳥の保存措置のため漁具の制限が定められている。メバチを漁獲する大臣許可遠洋、近海はえ縄漁業は水産庁国際課かつお・まぐろ漁業室で指導、監督している。遠洋、近海まぐろはえ縄漁業では農林水産大臣が命じたときは、オブザーバーを乗船させなければならない。ポジティブリスト(正規漁業許可を得た漁船リスト)に掲載された漁船で漁獲されたことを示す、証明書等による輸入事前確認手続きは水産庁で一元化された。我が国は、水産庁の中西部太平洋カツオ・マグロ資源管理能力強化支援事業を実施しており、管理機関等による管理目標、資源評価、管理措置等に従って資源管理指針を見直し、省令等を改定してきたことを順応的管理に準ずる施策であると評価した。資源管理指針の下で漁業者は自主的に休漁等に取組んでおり、海外まき網漁業協会等では実効的な管理措置の実現に向けて自ら活動している。漁業者団体が課題をもって改革計画や実証事業を主導してきており、日本かつお・まぐろ漁業協同組合は日本かつお・まぐろ漁業協同株式会社を組織し、販売事業に当たっている。水産政策審議会資源管理分科会には利害関係者も参画しており、WCPFCの年次会合や科学委員会等へもNGOが参加している。



地域の持続性

 中西部太平洋のメバチは、遠洋まぐろはえなわ漁業(岩手県、宮城県、福島県、神奈川県、静岡県、三重県、高知県、富山県、鹿児島県)、近海まぐろはえ縄漁業(高知県、宮崎県、沖縄県)で大部分が漁獲されている。漁業収入はやや高く推移し、収益率は低く、漁業関係資産は中ないし高程度である。経営の安定性については、収入の安定性、漁獲量の安定性とも中程度であった。漁業者組織の財政状況は未公表の組織が多い。操業の安全性は高かった。地域雇用への貢献は高く、労働条件の公平性については漁業で特段の問題はない。メバチは拠点市場への水揚げが多く、買い受け人は各市場とも取扱数量の多寡に応じた人数となっており、セリ取引、入札取引による競争原理は概ね働いている。卸売市場整備計画により衛生管理が徹底され、仕向けはほぼ全て生鮮食用向けになっている。労働条件の公平性は加工・流通でも特段の問題は無く、本地域の加工流通業の持続性は高い。先進技術導入と普及指導活動は行われており、物流システムも整っている。水産業関係者の所得水準は比較的高い。メバチを漁獲する主たる漁具漁法である延縄やメバチの食文化は各地で伝統が引き継がれてきている。



健康と安全・安心

 メバチには、体内の酸化還元酵素の補酵素として働くナイアシン、抗酸化作用を有するセレン、メチル水銀の解毒作用など様々な機能を有するといわれているセレノネインなど様々な栄養機能成分が含まれている。脂質には、血栓予防などの効果を有するEPAと脳の発達促進や認知症予防などの効果を有するDHAが豊富に含まれている。また、血合肉には、鉄、タウリンが多く含まれている。タウリンはアミノ酸の一種で、動脈硬化予防、心疾患予防などの効果を有する。また、魚介類のなかでもタンパク質含量の多い魚である。旬は国産のものでは晩秋~冬であり、この時期の国産の生は高価である。利用に際しての留意点は、ヒスタミン中毒防止である。ヒスタミン中毒は、筋肉中に多く含まれるヒスチジンが、細菌により分解、生成したヒスタミンによるものであるため低温管理が重要である。海外まき網漁船の冷凍物では、ヒスタミン対策が実施されているが、冷凍物でも、低温下での解凍・保管、解凍後の低温管理が必要である。メバチマグロは、他の魚種に比べメチル水銀を蓄積しやすいため、妊婦は、厚生労働省より公表されている目安量を基に摂取する必要がある。
引用文献▼ 報告書