サスティナブルでヘルシーなうまい日本の魚プロジェクト

Sustainable, Healthy and “Umai” Nippon seafood project

サスティナブルでヘルシーな
うまい日本の魚プロジェクト

マカジキ(宮崎県)

スズキ目、サバ亜目、マカジキ科に属し、学名はTertrapturus audax。体は長紡錘形で強く側扁。吻は剣状に突出し側扁。両顎に歯がある。尾柄に2対の隆起線が縦走する。胸鰭は長い。腹鰭軟条は癒合してひも状。両背鰭は接近する。第1背鰭前部の棘条は長い。体色は背面が黒紫色、腹面が銀白色。体側にコバルト色の横帯が明瞭。

分布

太平洋におけるマカジキの分布は、はえ縄におけるCPUE(努力量あたり漁獲量)のデータから、熱帯太平洋中西部海域を取り囲む馬蹄形をなすことが古くから知られている。

生態

体長組成の解析から1歳で64cm、3歳で150cm、5歳で200cmに達し、寿命は10歳程度(最大体長290 cm)と推定されている。

利用

刺身、寿司で生食されるほか、切り身はステーキや煮付けとされる。

漁業

 日本・台湾・韓国・米国のはえ縄、日本の大目流し網・定置網が主な漁業である。
 漁業は、はえ縄又は流し網によるものが大半であるが、一部は突きん棒やひき縄でも漁獲される。近年、はえ縄による漁獲は減少しているが、流し網による漁獲は増加傾向にある。漁獲のほとんどは、まぐろ類を対象とした操業の混獲であり、釧路沖、常磐沖、房総沖、南西諸島などでは、はえ縄、突きん棒及び流し網が季節的に本資源を主対象とした操業を行っている。


あなたの総合評価

資源の状態

 マカジキは重要水産資源であり各国の漁獲データ、サイズデータ、資源量指数を用いた統合モデルにより資源評価が実施されている。解析に必要なデータは国の委託事業として水産研究・教育機構、関係都県により毎年調査され更新されている。マカジキの資源量は乱獲状態にあり、漁獲も過剰漁獲であるとされ、漁獲量削減の保存管理措置が決定されている。



生態系・環境への配慮

 生態系への影響の把握に必要となる情報及びモニタリングの有無、中西部太平洋における生態系と混獲の問題、はえ縄による混獲情報などが取りまとめられている。当該海域において熱帯まぐろ類の仔稚魚調査、動物プランクトン採集、海洋環境調査が不定期的に実施されている。科学オブザーバー計画が確立され、はえ縄やまき網による漁獲物情報を取得する体制が部分的に整っている。
 評価対象種を漁獲する漁業による他魚種への影響について、はえ縄で同時に漁獲されるビンナガ、キハダ、メバチ、ヨシキリザメ、クロトガリザメの中でクロトガリザメについては資源が懸念される状態であった。混獲非利用種に対するPSA評価では、はえ縄の潜在的なリスクはアオウミガメ、アカウミガメ、タイマイ、ヒメウミガメでは高く、オサガメ(表層)、アカマンボウ、シイラなどでは中程度と判断された。環境省指定の絶滅危惧種のうち、評価対象水域と分布域が重複する種についてPSAでリスク評価を行った結果、全体としてリスクは低かったが、アカウミガメ、アオウミガメ、タイマイについてはリスクが高いと判断された。
 食物網を通じたマカジキ漁獲の間接影響、漁業による環境への影響は以下の通り評価された。マカジキは外洋の表層生態系において、ほぼ最高位捕食者に位置すると考えられる。餌生物として挙げられるカツオ、ビンナガ、シイラ、ツムブリ、イカ類、小型浮魚類については資源状態の懸念は見られなかった。マカジキ同様に高次捕食者と位置づけられる魚種の資源水準・資源動向を見ると一部の魚種に減少傾向が見られた。漁獲物の平均栄養段階水準と、栄養段階が高い種の多様性と生物量の年変動から、重篤ではないが対象漁業による生態系特性への影響が懸念された。当該海域における日本漁船の海洋への汚染や廃棄物の投棄についての違反報告はなかった。単位漁獲量あたりCO2排出量は、まぐろはえ縄漁業は我が国漁業の中では高い数値となっているため排出ガスによる大気環境への悪影響が懸念された。



漁業の管理

 ISC(北太平洋まぐろ類国際科学委員会)かじき類作業部会により資源状態は乱獲状態、漁獲は過剰漁獲の状態にあるとされた。この資源を漁獲するかじき等流し網漁業は東シナ海かじき等流し網漁業とかじき等流し網漁業からなり、何れも特定大臣許可漁業である。遠洋、近海まぐろはえ縄漁業は大臣許可漁業、沿岸まぐろはえ縄漁業は大臣届出漁業である。その他はえ縄漁業は県知事許可漁業である。インプット・コントロールが成立しているが、漁獲は過剰である。大臣許可漁業は農林水産大臣がトン数や海域を公示し、漁業者からの申請により許可証が発給されている。かじき等流し網漁業には操業海域や期間、漁具に制限がある。遠洋、近海、沿岸まぐろはえ縄業ではヨゴレ、クロトガリザメは採捕してはならず、また海鳥の保存措置のため漁具の制限が決められている。東シナ海かじき等流し網漁業でも海亀類等の特定魚種の採捕が禁止されている。燃油使用量の削減、抑制を漁業者団体が主導した。水産庁国際課がかつお・まぐろ漁業室を中心に、WCPFC(中西部太平洋まぐろ類委員会)及びISC(北太平洋まぐろ類国際科学委員会)と連携している。マカジキを漁獲する大臣許可遠洋、近海、沿岸まぐろはえ縄漁業は国際課かつお・まぐろ漁業室で、かじき等流し網漁業は管理調整課で指導・監督している。その他はえ縄漁業は県知事の管轄である。遠洋、近海まぐろはえ縄漁業では、農林水産大臣が命じたときにはオブザーバーを乗船させなければならない。ポジティブリストの掲載漁船で漁獲されたことの証明書等による輸入事前確認手続きは水産庁で一元化された。マカジキは資源管理指針では取り扱われていない。管理機関、関係機関により管理目標、資源評価や管理措置が改訂されれば、資源管理指針や指定漁業の許可及び取締り等に関する省令等の改訂が行われよう。順応的管理に準ずる施策がないとまでは言えない。漁業者は業種別漁業協同組合、協会等の団体に所属し、多くの近海まぐろはえ縄漁業、かじき等流し網漁業者は沿海漁業協同組合にも属している。国や県が作成した資源管理指針の下で漁業者は自主的に休漁等に取り組んでいる。漁業者団体が課題をもって改革計画や実証事業を主導してきており、日本かつお・まぐろ漁業協同組合は日本かつお・まぐろ漁業協同株式会社を組織し、販売事業に当たっている。水産政策審議会資源管理分科会には利害関係者も参画しており、WCPFCの年次会合や科学委員会等へもNGOが参加している。



地域の持続性

 中西部太平洋のマカジキは、かじき等流し網漁業(宮城県、千葉県、長崎県)遠洋まぐろはえ縄漁業(岩手県、宮城県、福島県、神奈川県、鹿児島県)、近海まぐろはえ縄漁業(高知県、宮崎県、沖縄県)、沿岸まぐろはえ縄漁業(千葉県、宮崎県)、その他はえ縄漁業(千葉県)で、大部分が漁獲されている。漁業収入のトレンドは中程度で、収益率は中程度、漁業関係資産は低かった。経営の安定性については、収入、漁獲量の安定性ともに低かった。漁業者組織の財政状況は未公表の組織があるが、沿岸漁業も含めて総合しては比較的高かった。操業の安全性は高く、地域雇用への貢献は高いと判断される。労働条件の公平性については、漁業で特段の問題はなかった。買い受け人は各市場とも取扱数量の多寡に応じた人数となっており、セリ取引、入札取引による競争原理は概ね働いている。卸売市場整備計画により衛生管理が徹底され、仕向けは刺身商材が主である。労働条件の公平性は加工・流通でも特段の問題は無かった。加工流通業の持続性は高いと評価できる。先進技術導入と普及指導活動は行われており、物流システムも整っている。水産業関係者の所得水準は比較的高い。地域毎に特色ある漁具漁法が残されており、伝統的な加工技術や料理法があることに加えて異業種間交流で新たな活用法も生まれている。



健康と安全・安心

 マカジキには、体内の酸化還元酵素の補酵素として働くナイアシン、骨の主成分であるカルシウムやリンの吸収に関与しているビタミンD、高血圧予防に効果があるカリウム、抗酸化作用を有するセレン、メチル水銀の解毒作用など様々な機能を有するといわれているセレノネインなど様々な栄養機能成分が含まれている。脂質には、血栓予防などの効果を有するEPAと脳の発達促進や認知症予防などの効果を有するDHAが含まれている。また、アミノ酸スコアが100といった良質のタンパク質が豊富である。旬は秋から冬である。利用に際しての留意点は、ヒスタミン中毒防止と生食によるアニサキス感染防止である。ヒスタミン中毒は、筋肉中に多く含まれるヒスチジンが、細菌により分解、生成したヒスタミンによるものであるため低温管理が重要である。冷凍物では、低温下で解凍・保管が必要である。アニサキスは、魚の死後時間経過に伴い内臓から筋肉へ移動するため、生食には新鮮な魚を用いること、内臓の生食はしない、冷凍・解凍したものを刺身にするなどで防止する。マカジキは、他の魚種に比べメチル水銀を蓄積しやすいため、妊婦は、厚生労働省より公表されている目安量を基に摂取する必要がある。
引用文献▼ 報告書