マサバは重要な水産種であり、資源生態に関する調査研究は古くから積極的に進められてきた。分布・回遊、年齢・成長・寿命、成熟・産卵に関して学術論文や報告書が豊富に蓄積されており、資源評価の基礎情報として利用可能である。漁獲量・努力量データの収集、定期的な科学調査、漁獲実態のモニタリングも毎年行われている。このように定期的に収集される漁業データ、科学調査データに基づき、年齢別漁獲尾数が推定され、齢構成資源動態モデル(tuned VPA)を使用した資源評価が毎年実施されている。資源評価の内容は公開の場を通じて利害関係者の質疑やパブリックコメントを受けて精緻化され、算定されたABC(生物学的許容漁獲量)は、水産政策審議会を通じてTAC(漁獲可能量)設定などの漁業管理に反映される仕組みが確立されている。最近年の漁獲係数Fをチューニングで推定したコホート解析(tunedVPA)により、各漁期年の年齢別資源尾数が1970年から推定されている。当該解析手法については複数の外部有識者(大学の専門家)によるチェックを毎年受けることで客観性を担保している。
1970 年以降の45 年間の親魚量および資源量の推移から資源水準を判断し、親魚量45 万トン(Blimit)以上を中位水準、それ未満は低位水準、1970 年代に見られた資源量320 万トン以上を高位水準とした。2014 年の親魚量は33.6 万トンとBlimit を下回っていることから、資源水準は低位と判断される。過去5 年間(2010~2014 年)の親魚量および資源量の推移から資源動向は増加と判断される。
現状の漁獲圧(漁獲係数Fcurrent)は、東日本大震災の影響が見られる2011年以降の最近4 年(2011~2014 年)の平均と定義すると、Fcurrent は、F30%SPR と同程度であり、管理の閾値やFmsy の代替値に用いられるF0.1 を下回っている。Fcurrentは高くないと判断される。
算定されたABCを基に毎年TACが決定され配分される仕組みが定着している。また、再生産関係の解析結果を受けマサバ親魚量の回復目標を45万トンとし、漁業者の自主的管理措置が策定された。