資源の状態

カタクチイワシ（静岡県）

対象種の資源生物研究・モニタリング・評価手法

　分布と回遊、成熟と産卵に関する知見は、学術論文や報告書として蓄積されており、資源評価の基礎情報として精度の高い情報が利用可能である。年齢・成長・寿命に関する知見は、一部の海域で把握され資源評価に最低限の情報として利用可能である。漁獲量・努力量データの収集、定期的な科学調査、漁獲実態のモニタリングも毎年行われている。このように定期的に収集される漁業データ、科学調査データに基づき、年齢別漁獲尾数が推定され、齢構成資源動態モデルを使用した資源評価が毎年実施されている。資源評価の内容は公開の場を通じてパブリックコメントを受けて精緻化されている。

対象種の資源水準と資源動向

　コホート解析（VPA）により各漁期年の年齢別資源尾数が1978年から推定されている。当該解析手法については複数の外部有識者（大学の専門家）によるチェックを毎年受けることで客観性を担保している。1978年以降の37 年間の親魚量および資源量の推移から資源水準を判断し、親魚量130千トン（Blimit）以上を中位水準、それ未満は低位水準、過去の親魚量の最低と最高の三等分の上位1／3に相当する618千トン以上を高位水準とした。2015 年の親魚量は67千トンとBlimit を下回っていることから、資源水準は低位と判断される。過去5 年間（2011～2015年）の親魚量および資源量の推移から資源動向は減少と判断される。

対象種に対する漁業の影響評価

　現状の漁獲圧（漁獲係数Fcurrent）は、2013年以降の3年（2013～2015年）の平均と定義すると、Fcurrent は、資源の早期回復が期待されるF値であるFlimit（1.13）を上回っており、Fcurrentは高いと判断される。現状の漁獲圧での資源枯渇リスクは高い。評価の結果を受けて、ABCは設定されその値が漁業管理方策に一部反映されている。不確実性を考慮した管理基準が設定されており、予防的措置が設定されているが一部しか反映されていない。また、本種は気候変動に対応して資源量が変動することが知られている。