カタクチイワシは重要な水産資源であり、南北方向には南シナ海からオホーツク海まで、東西方向には黄海から太平洋沖合域にまで広く分布するため、基本的な回遊様式はほとんどわかっていない。一方、年齢・成長・寿命・成熟・産卵については、資源評価に使用可能な最低限の情報が既往知見から得られている。カタクチイワシ対馬暖流系群についてのモニタリング調査はある程度整備されており、漁獲量および漁獲努力量の長期統計および体長・体重・年齢・生物データが収集されている他、新規加入量の把握を目的とした調査航海も実施されている。
加入成功率の上位10%と加入量の上位10%にそれぞれ相当する2直線の交点に近い親魚量91千トン(2005年における値)を、Blimit(資源回復措置の要否の閾値)と定義した。2015年の親魚量は62千トンであり、Blimitを下回っている。資源水準の「低位」と「中位」の境界もBlimitと同一の親魚量91千トンと定義した。一方、「高位」と「中位」の境界は、親魚量の最小値を基準とした場合の、親魚量の最大値までの増分の上位1/3と2/3との境界値である155千トンと定義した。2015年における資源水準は、親魚量(62千トン)がBlimitを下回っていることから、低位と判断した。また資源動向は、過去5年(2011年~2015年)の資源量と親魚量の推移から横ばいと判断した。
2015年におけるカタクチイワシ対馬暖流系群の親魚量はBlimitを下回っているが、Fcurrentはやや高く、現状の漁獲圧の下で資源が枯渇する可能性は中程度と考えられる。本系群のABCtarget算定の過程では不確実性が考慮されているが、近年明らかになりつつある加入量と水温との関係は考慮されていない。本系群はTAC対象種でないため、TACの設定や漁獲制限などの具体的な資源管理は行われておらず、従って資源評価結果は漁業管理へ反映されていない。本系群の資源評価では、中国と韓国による漁獲は考慮されていない。