日本海西部においてサワラを漁獲する漁業による生態系への影響の把握に必要となる情報、モニタリングの有無について、日本海西部はマアジ、ブリ等の重要な漁業対象種の生育、索餌海域に当たり、漁場が形成されるため、分布域と水温の関係等に関する研究例は豊富であり、サワラについても漁獲量が増加しだした2000年以降情報が蓄積されている。当該海域では海洋環境及び漁業資源に関する調査が水産研究・教育機構の調査船、用船、府県の調査船等によって毎年実施されている。行政機関により府県別・漁業種類別・魚種別漁獲量等は調査され公表されているが、混獲や漁獲物組成に関する情報は十分得られていない。
評価対象種を漁獲する漁業による他魚種への影響について、定置網の混獲利用種であるマイワシ、ブリ、マアジについては、資源はいずれも懸念される状態になかった。評価対象となる混獲非利用種はなしとした。希少種については、アカウミガメに中程度の懸念が認められたが、全体としては低かった。
食物網を通じたサワラ漁獲の間接影響について、日本海におけるサワラの捕食者は知られていないため、ほぼ最高次捕食者に近いと考えられる。当該海域におけるサワラの餌生物は主にカタクチイワシ、マアジとされるが、カタクチイワシの資源状態は懸念される状態であった。競争者と考えられるのは、魚食性が強いブリ、クロマグロであるが、クロマグロは日本海西部での漁獲は安定しているものの系群全体での資源状態が低位であり懸念される状態であった。
漁業による生態系全体への影響については、多くの魚種で漁獲量の減少が認められ、スルメイカやさめ類等の減少に加え、近年のマイワシの漁獲量増加が漁獲物平均栄養段階(MTLc)の低下に寄与していると考えられた。海底環境への影響については定置網は海底をひき回す漁具ではないため影響は無いと判断された。定置網の検挙事例がないため水質環境への影響は認められないと判断される。定置網の漁法から判断して大気環境への影響については、ほとんどないと判断された。