伊勢・三河湾における小型底びき網漁業の主要対象種として、資源生態に関する調査研究は間欠的ではあるが古くから行われている。伊勢・三河湾以外にも東京湾等のシャコが重要漁獲対象となっており、内湾域における調査研究に基づいた知見は、分布、成長、成熟・産卵に関する学術論文や報告書として蓄積があり、資源評価の基礎情報として部分的に利用可能である。漁獲量・努力量データの収集、定期的な科学調査、漁獲実態のモニタリングについて、2004年以降は毎年の調査によりデータの蓄積が開始され、2010年以降は現在と同様の調査体制が整った。このように定期的に収集される漁業データ、科学調査データに基づき、シャコのCPUE(単位漁獲努力量あたり漁獲量)の経年変化を主体とした評価を実施している。資源評価の内容は公開の場を通じて外部評価委員のコメント等を受けて精緻化されている。
過去31年間(1989~2019年)の資源量指標値の推移から2019年の資源水準は低位であった。直近5年間(2015~2019年)の資源量指標値の推移から動向は減少と判断された。
伊勢・三河湾の夏季を中心とした貧酸素水塊の拡大時にはシャコの分布域が縮小する結果として水塊周辺部漁場での漁獲圧が高まることから、持続的生産に対して漁業の影響はかなり大きいと推定されるが、直近5年のうち3年は漁獲量がABClimitを下回った。将来の絶滅確率からみて現状の漁獲圧で資源が枯渇するリスクは中程度と判断した。算定されたABC(生物学的許容漁獲量)に基づいた管理は現状では実施されていないが、ABC以外の管理方策の提言が行われており、漁業管理の現場での今後の検討課題とされている。