サスティナブルでヘルシーなうまい日本の魚プロジェクト

Sustainable, Healthy and “Umai” Nippon seafood project

サスティナブルでヘルシーな
うまい日本の魚プロジェクト

スルメイカ(富山県)

ツツイカ目アカイカ科に属し、学名はTodarodes pacificus。外套の先端に三角形のエンペラが一対あり、併せて菱形をなす。外套膜は筋肉質で外套膜の背中線上に暗色の縦帯がある。

分布

日本周辺海域に広く分布し、周年にわたり再生産を行っている。秋季から冬季に発生した群は卓越して多く、産卵時期や分布回遊の違いから秋季発生系群と冬季発生系群の2系群に分けることができる。このうち秋季発生系群は日本海全域に分布している。冬季発生系群は日本海では11~翌3月に漁獲される。

生態

単年生であり、1年で成長・成熟し、産卵後に死亡する。成熟開始月齢は、雄で約9カ月、雌は約10カ月以降。産卵は10~12月に、北陸沿岸~東シナ海で行われる。沿岸域では小型魚類、沖合域では動物プランクトンを捕食し、主に大型魚類や海産ほ乳類に捕食される。

利用

主に夏から秋に漁獲対象となり、漁場は回遊とともに移動する。沿岸域の漁獲物は主に生鮮で、沖合域の漁獲物は主に冷凍で水揚げされる。するめ(素干し)、塩辛、くん製、さきいか等の調味加工品、刺身、焼き物、天ぷら、揚げ物などに利用される。

漁業

評価対象としたスルメイカ秋季発生系群は、我が国では、近海いか釣り漁業(主に旧中型いか釣り漁船30~200トン)と、沿岸いか釣り漁業(30トン未満の小型いか釣り漁船)により漁獲される。この他、韓国、中国、北朝鮮によっても漁獲されている。海域によっては定置網でもまとまった漁獲がある。
近海いか釣り(沖合漁業、冷凍)は旧中型いか釣り船、沿岸いか釣り(沿岸漁業、生鮮)は小型いか釣り船で操業される。


あなたの総合評価

資源の状態

 調査船による釣獲試験結果により2016年の資源量は906千トンと推定され、資源量に基づき資源水準は中位、最近5年間(2012~2016年)の資源量の変化から動向は減少である。近年、10~11月の稚仔分布量の減少や再生産成功率(RPS)の低下が観察されており、その原因として、海洋環境の変化(秋季の高水温化)や密度効果の影響が考えられる。以上の情報については、国の委託事業として水産研究・教育機構、関係道府県により毎年調査され更新されている。資源評価結果は公開の会議で外部有識者を交えて協議されるとともにパブリックコメントにも対応した後に確定されている。資源評価結果は毎年公表されている。



生態系・環境への配慮

 評価対象水域である日本海北区はスルメイカのみならずマイワシ、ブリなど重要魚種の漁場が形成されるため、分布域と水温の関係などに関する研究例は豊富であるが、海洋環境と基礎生産力、低次生産の関係など生態系モデル構築に必要となる研究例は少ない。当該海域における海洋環境、低次生産及び浮き魚生態系構成種などに関する調査は水産機構の調査船により毎年実施されているほか各県で水温、塩分等の定線調査を原則毎月実施している。
 いか釣り漁業には混獲利用種としてマフグが挙げられ、混獲非利用種は殆ど存在しないと考えられる。希少種で生息環境が日本海北区と重複する種は全体としてリスクは低い値を示した。
 捕食者としてクロマグロ、ブリ、サワラ、オオミズナギドリ,ミンククジラ、イシイルカを対象に評価を行った結果スルメイカ漁獲の影響は検出されなかった。餌生物としてニホンウミノミ、キュウリエソに対し評価を行ったが悪影響はみられなかった。競争者のうちマサバの資源状態が懸念されたが、いか釣り漁業の影響ではない。
 生態系全体への影響をみると、いか釣りによる影響の強度は軽微であるが、日本海北区全体として漁獲が栄養段階(TL)3.5の魚種に集中している点、資源状態が低位かつ減少傾向を示す種が含まれている点から生態系特性の変化や変化幅拡大などが一部起こっている懸念があるとした。
 いか釣りは着底漁具ではないため海底への影響はない。対象漁業からの排出物は適切に管理され、水質環境への負荷は軽微であると判断された。30トン以上、200トン未満の旧中型いか釣り船を用いた近海いか釣り、30トン未満の小型いか釣り船を用いた沿岸いか釣り漁業の漁獲量1トンあたり、生産金額あたりのCO2排出量は漁業種類の中では比較的高く、燃油消費量や温暖化ガスの環境負荷が高い漁業であると考えられる。



漁業の管理

 日本海北区においてスルメイカを漁獲する主な漁業種類は近海いか釣り漁業と沿岸いか(小型するめいか)釣り漁業、および大型定置漁業である。山形県の近海いか釣り漁業、青森県(日本海北区)の沿岸いか釣り漁業、富山県の大型定置網漁業で、2016年には日本海北区での漁獲量の76%を占めている。TAC対象魚種であり、従来県知事漁業であった各沿岸地先を移動して操業する沿岸いか釣り漁業は大臣届出漁業としても位置付けられ、知事が集計していたTAC管理は30トン以上漁船近海いか釣り漁業とともに大臣が行なうようになった。大型定置網漁業による量のTACは県知事管理分である。灯火光量制限等の自主規制がある。周辺国と管理、利用の協議の場はあるが、外国船の違法操業への対応強化が要請されている。



地域の持続性

 日本海北区におけるスルメイカ漁業の収益率は低い。操業の安全性について2016年は死亡事故はなく、地域雇用への貢献も高いと評価された。
 一部の県は小規模市場が多いが、おおむね競争的ではあり競争原理が働いていると判断される。その一方で、水揚げ情報、入荷情報、セリ・入札の開始時間、売り場情報などは市場関係者に公表されており、取引の公平性は担保されている。各県とも衛生管理は徹底されている。スルメイカは鮮魚としての流通が多い。操業の安全性、地域雇用への貢献、労働条件の公平性については特段問題も見られなかった。
 製氷、冷凍・冷蔵施設は整備されている。先端技術導入と普及指導活動も行われており、物流システムも整っている。水産業関係者の所得水準は平均的である。地域文化のうち、加工流通については多くの継承がある。



健康と安全・安心

 スルメイカには、各種酵素の成分となる亜鉛、抗酸化作用を有するセレン、動脈硬化予防、心疾患予防の効果を有するタウリンなどの様々な栄養機能性分が含まれている。旬は9月~1月である。
 利用に際しての留意点は、生食によるアニサキス感染防止である。アニサキスは、イカの死後時間経過に伴い内臓から筋肉へ移動するため、生食には新鮮なイカを用いること、内臓の生食はしない、冷凍・解凍したものを刺身にするなどで防止する。
 イカは、特定原材料に準ずるものに指定されているため、イカを扱うことによるアレルゲンの拡散に留意する。
引用文献▼ 報告書