サスティナブルでヘルシーなうまい日本の魚プロジェクト

Sustainable, Healthy and “Umai” Nippon seafood project

サスティナブルでヘルシーな
うまい日本の魚プロジェクト

カツオ(神奈川県)

スズキ目、サバ亜目、サバ科、カツオ属に属し、学名は Katsuwonus pelamis。体は紡錘形で、横断面は円形。歯は両顎のみにある。両背鰭はわずかに分離。眼の後部、胸甲部、側線以外の部分には鱗がない。体色は背面が暗青紫色。腹面は銀白色を帯び、4~6条の黒色縦帯がある。

分布

太平洋におけるカツオの分布域は、適水温帯の分布にあわせて西側で南北に広く東側では狭くなる。

生態

産卵は、表面水温24℃以上の水域で広く行われ、熱帯水域では周年行われている。満1歳で尾叉長44 cm、満2歳で62 cmに達し、最大体長は100 cmに達するとされる。寿命は6歳以上。主要な餌生物は魚類、甲殻類及び頭足類である。マグロ類、カジキ類、サワラ類、サメ類、海鳥によって捕食されている。

利用

缶詰や節原料のほか、刺身・たたきで生食される。

漁業

 2017年の漁法別漁獲量では、まき網が128万トンで79%、竿釣りが12万トンで8%、その他の漁業が22万トンで全体の13%であった。
 まき網については、米国、韓国、台湾及び日本の遠洋漁業国が近年の漁獲量の5~6割を占め、他はパプアニューギニア、インドネシア、フィリピンが多い。竿釣りについては、2005年頃まで日本が約6割を占めていたが、次第に減少し、2006年以降はインドネシアが最も漁獲量が多くなり、日本の漁獲量は近年全体の4~5割ほどになっている。


あなたの総合評価

資源の状態

 カツオは我が国周辺における重要水産資源であり、3年ごとに漁獲量データ、努力量データ、体長組成データ、標識放流再捕データを用いてMultifan-CLモデルにより資源量が算出されている。解析に必要なデータは国の委託事業として水産研究・教育機構、及び関係都県により毎年調査され更新されている。カツオの産卵親魚量は2010年以降、資源は過剰漁獲の状態にはなく、乱獲状態にも陥っていない。WCPFC(中西部太平洋まぐろ類委員会)はSPC(太平洋共同体事務局)の資源評価結果を踏まえ、カツオの保存管理措置を導入している。



生態系・環境への配慮

 生態系への影響の把握に必要となる情報、モニタリングの有無について、中西部太平洋における生態系と混獲の問題、生態系モデル解析、はえ縄による混獲情報が取りまとめられている。熱帯まぐろ類とカツオの仔稚魚、動物プランクトン、及び海洋環境の調査が不定期的に実施されている。2008年から科学オブザーバー計画が確立され、まき網による漁獲物情報が部分的に収集可能となっている。
 評価対象種を漁獲する漁業による他魚種への影響として、混獲利用種であるキハダの資源状態は懸念される状態にない。混獲非利用種はツムブリ、クロトガリザメ、アミモンガラ、クサヤモロ、シイラなどである。東部太平洋でのPSA評価では、クロトガリザメが中程度のリスクと判断された以外は軽微とされている。環境省指定の絶滅危惧種のうち、アカウミガメ、アオウミガメ、タイマイでリスクが中程度と判断された。
 食物網を通じたカツオ漁獲の間接影響、漁業による環境への影響についてみると、カツオの捕食者として、メカジキ、クロカジキ、マカジキ、アオザメ、ヨシキリザメ、クロトガリザメ、ヨゴレ、大型のメバチとキハダなどがあげられる。中西部太平洋表層の生態系モデルEcopathのMixed trophic impactによれば、カジキ類、サメ類への負の影響は軽微であるが、キハダおよびカツオ自身に対しては中程度の負の影響が検出された。魚食性のカツオは餌生物に対する選択性は弱く日和見食性と考えられている。上記生態系モデルを用いた解析によれば、餌生物である魚類、甲殻類、頭足類に対する負の影響は軽微である。カツオとほぼ同等の栄養段階を持つ肉食性魚類についての上記生態系モデルの解析によれば、キハダへの負の影響が検出された。
 漁獲物の平均栄養段階MTLcは1980年頃より上昇傾向にあり、高次栄養段階生物の現存量および多様度が低下していることから生態系特性に一部変化が懸念される。
 WCPFC海域における日本漁船による海洋への汚染や廃棄物の投棄についての違反報告は見いだせなかった。単位漁獲量あたり排出量(t-CO2/t)については、大中型かつおまぐろ1そうまき網は我が国漁業の中で比較的低く、排出ガスによる大気環境への影響は軽微と考えられる。



漁業の管理

 SPCによって実施された資源評価は、WCPFCでは合意できていない。大中型まき網、遠洋、近海かつお一本釣り漁業は大臣許可漁業で、沿岸かつお一本釣り漁業は広域漁業調整委員会承認漁業である。アウトプット・コントロールは導入されていない。資源評価結果が合意されていない中で、インプット・コントロールが漁獲圧を制御できているとは言えない。テクニカル・コントロールではFAD(集魚装置)の設置規制等が実施されているが、禁止期間の短縮がみられる。遠洋、近海かつお・まぐろ漁業によるクロトガリザメ、ヨゴレ等の採捕、また大中型まき網漁業によるジンベエザメ近辺での操業が禁止されている。一本釣り漁法では放置漁具の問題はない。WCPFCとSPCとは、水産庁国際課がかつお・まぐろ漁業室を中心に連携している。カツオを漁獲する大中型まき網漁業は、水産庁国際課かつお・まぐろ漁業室、管理調整課で、一本釣り漁業は、国際課かつお・まぐろ漁業室で指導、監督している。沿岸かつお一本釣漁業は、クロマグロ管理との関連から実質的に広域漁業調整委員会承認となった。管理体制が確立し機能している。大中型まき網漁業、遠洋、近海かつお・まぐろ漁業では、農林水産大臣が命じたときは、オブザーバーを乗船させなければならない。ポジティブリストの掲載漁船で漁獲されたことの証明書等による輸入事前確認手続きは水産庁に一元化された。我が国は中西部太平洋カツオ・マグロ資源管理能力強化支援事業(WCPFC)を実施している。管理機関等による管理目標、資源評価結果、管理措置等に従って資源管理指針を見直し、国内省令等を改定してきたことを順応的管理に準ずる施策と評価する。資源管理指針の下で漁業者は自主的に休漁等に取り組んでおり、海外まき網漁業協会等では実効的な管理措置の実現に向けて自ら活動している。 漁業者団体が改革計画や実証事業を主導してきており、沿海漁業協同組合ではブランドカツオの設立で販売を促進している。水産政策審議会資源管理分科会には利害関係者も参画しており、WCPFCの年次会合等へもNGOが参加している。



地域の持続性

 中西部太平洋のカツオは、大中型まき網1そうまき遠洋かつお・まぐろ漁業(宮城県、東京都、神奈川県、静岡県、三重県、新潟県、鳥取県、長崎県)、大中型まき網1そうまき近海かつお・まぐろ漁業(静岡県)、遠洋かつお一本釣漁業(宮城県、静岡県、三重県)、近海かつお一本釣り漁業(宮崎県)、沿岸かつお一本釣り漁業(高知県)で大部分が漁獲されている。漁業収入は中程度で推移していた。収益率は低く、漁業関係資産は中程度である。経営の安定性については、収入、漁獲量の安定性ともに中程度であった。漁業者組織の財政状況は未公表の組織が多い。操業の安全性は高く、地域雇用への貢献は高い。労働条件の公平性については、漁業における特段の問題はなかった。カツオは拠点市場への水揚げが多く、買い受け人は各市場とも取扱数量の多寡に応じた人数となっており、セリ取引、入札取引による競争原理は概ね働いている。卸売市場整備計画により衛生管理が徹底され、仕向けは高級と中級消費用が混在している。労働条件の公平性は、加工・流通でも特段の問題は無かった。加工流通業の持続性は高いと評価できる。先進技術導入と普及指導活動は行われており、物流システムも整っていた。水産業関係者の所得水準は高い。釣り、まき網漁業とも伝統的な漁具漁法をベースに操業しており、伝統的な加工・流通技術が維持されている中で、新しい利用法も開発されている。



健康と安全・安心

 カツオには、体内の酸化還元酵素の補酵素として働くナイアシン、細胞内の物質代謝に関与しているビタミンB1、骨の主成分であるカルシウムやリンの吸収に関与しているビタミンD、抗酸化作用を有するセレン、メチル水銀の解毒作用など様々な機能を有するといわれているセレノネイン、動脈硬化予防や心疾患予防などの効果を有するタウリンなど様々な栄養機能成分が含まれている。脂質には、血栓予防などの効果を有するEPAと脳の発達促進や認知症予防などの効果を有するDHAが豊富に含まれている。また、血合肉には、鉄が多く含まれている。また、魚介類のなかでもタンパク質含量の多い魚である。旬は春から秋である。春は、初がつおと言われ、脂はないが美味である。秋は、戻りがつおと呼ばれ、脂がのっていて、美味である。利用に際しての留意点は、ヒスタミン中毒防止と生食によるアニサキス感染防止である。ヒスタミン中毒は、筋肉中に多く含まれるヒスチジンが、細菌により分解、生成したヒスタミンによるものであるため低温管理が重要である。冷凍物では、低温下で解凍・保管が必要である。アニサキスは、魚の死後時間経過に伴い内臓から筋肉へ移動するため、生食には新鮮な魚を用いること、内臓の生食はしない、冷凍・解凍したものを刺身にするなどで防止する。
引用文献▼ 報告書