サスティナブルでヘルシーなうまい日本の魚プロジェクト

Sustainable, Healthy and “Umai” Nippon seafood project

サスティナブルでヘルシーな
うまい日本の魚プロジェクト

漁業の管理

マダイ(和歌山県 瀬戸内海)

管理施策の内容

 小型底びき網漁業は、兵庫県、香川県、岡山県、和歌山県の各県の資源回復計画により自主的に休漁等の漁獲努力量削減に取り組み、それらは2011年に策定された各県の資源管理指針に引き継がれた。兵庫県の吾智網、刺網も資源管理指針において休漁に取り組んできた。香川県、徳島県の小型定置網も資源管理指針において公的な管理のほかに自主的管理として操業期間の短縮等に取り組んできた。以上のことから小底、吾智網、刺網、小型定置網はいずれもインプット・コントロールは自主的な取り組みを含めて適切に実施されており、マダイに対する漁獲圧も有効に制御できていると考えられる。テクニカル・コントロールについては、小型魚を採捕する可能性がある小底、刺網、小型定置網については公的規制のほかに自主的に再放流サイズを拡大するなど、小型魚保護のための規制に取り組んでいる。マダイは栽培漁業対象種であるが、種苗放流効果を高めるため、漁業における小型魚保護等に取り組んでいる。着底漁具である小底については、瀬戸内海では藻場、県ごとの保護水面等でのひき網は禁止されており、水産資源の稚魚育成場となる水面も各県の漁業調整規則等で保護されており、資源、生態系、環境保護のための相当程度の措置が講じられている。各県漁業者、漁業者団体は、資源管理指針に則り水質の保全、藻場及び干潟の保全等により漁場環境の改善に取り組むほか、操業中に入網した海ゴミの持ち帰り、瀬戸内海関係漁連・漁協連絡会議の開催、森づくり活動、海浜清掃、海ゴミ削減等に取り組んでいる。

引用文献▼ 報告書

執行の体制

 マダイ瀬戸内海東部系群は瀬戸内海東部に分布しているが、複数の県にまたがる資源の管理は瀬戸内海広域漁業調整委員会が担当するため、生息域をカバーする資源の管理体制が確立している。漁船操業の監視は基本的には県の取締当局で実施し、水産庁漁業取締本部神戸支部は、各県漁業取締船等と連携を図りながら指導取締を行っている。水揚げは基本的には地元漁協など、地域の地方卸売市場になされ、漁獲物のサイズの確認等は漁協職員や漁業者間でなされ得る。関係省令、各県漁業調整規則、海区漁業調整委員会指示等に違反した場合、漁業法、各県漁業調整規則の規定により有効な罰則規定が定められている。2011年に策定された各県の資源管理指針に基づく自主的な資源管理計画については、PDCAサイクルを着実に実施するため策定後4年を経過した次の年度に内容の適否について資源管理協議会で評価・検証を行うとされ、資源状態に合わせて順応的に管理施策を更新できる体制が採られている。

引用文献▼ 報告書

共同管理の取り組み

 各県の小底、吾智網、刺網、小型定置網漁業者は地域の沿海漁業協同組合あるいは漁協支所に所属し、漁業者が特定できる。各県の資源管理指針に基づく資源管理計画では公的な規制を上回る自主規制が策定され、強く働いていることから資源管理に対する漁業者組織の影響力は強いといえる。各県漁業協同組合連合会は事業として購買、共販、流通加工、直販、指導等を行い、また地域の漁業協同組合でも地域ブランドの立ち上げ等に取り組み、個別の漁業者では実施が困難な経営上の活動を実施し水産資源の価値を最大化している。漁業関係者は、県の資源管理指針に基づく自主的な資源管理計画の履行等に主体的に参画するための活動を行っている。各漁業の公的管理を策定する場である各県の海区漁業調整委員会、瀬戸内海広域漁業調整委員会、さらにマダイを含む魚種について資源管理のロードマップ等を協議する水産政策審議会資源管理分科会にも漁業者団体代表が主体的に参画している。海区漁業調整委員会、瀬戸内海広域漁業調整委員会、各県の海面利用協議会には幅広い利害関係者が参画している。水産政策審議会資源管理分科会にも幅広い分野からの参画がみられる。各県の資源管理指針では、関係漁業者が魚種または漁業種類ごとに自主的に資源管理計画を作成し、策定後4年を経過した翌年度に、資源管理協議会において資源管理措置が適切か否か評価・検証し、その結果を踏まえ資源管理計画の目標、管理措置の内容等を見直し、漁業者及び関係団体への周知徹底を図るとされている。このサイクルの中で、漁業者及び関係団体が資源管理協議会における意思決定のプロセスに参画できていないと思われる。第7次栽培漁業基本計画において、種苗の生産、放流及び育成を推進することが適当な種としてマダイが選定されている県では、受益者の費用負担に関し受益者に応分の負担を求める、あるいは受益者から応分の負担を受けることを検討する等とされ、費用負担の検討が行われている段階である。

引用文献▼ 報告書