Sustainable, Healthy and “Umai” Nippon seafood project

サスティナブルでヘルシーな
うまい日本の魚プロジェクト

Pacific cod(Toyama prefecture)

タラ目タラ科に属し、学名はGadus macrocephalus。頭は大きく、腹部が肥大する。上顎は下顎より突出する。下顎の先端に1本のひげがある。背鰭は3基、臀鰭は2基。

分布

銚子以北、北海道周辺、日本海、朝鮮半島周辺、渤海、黄海、東シナ海、オホーツク海からベーリング海、カリフォルニア州に分布。日本海北部における分布水深は200~400mであるが産卵期には浅い水深に移動する。

生態

寿命は10歳。成熟開始年齢は3~4歳であり、雄では体長40cm以上、雌では50cm以上。産卵期は1~3月である。未成魚、成魚ともに魚類、頭足類、甲殻類(エビ類)を主な餌としている。なお、本種の主たる捕食者は明らかではない。

利用

日本海では多くが生鮮で扱われる。鍋物、フライ等にし、精巣は酢の物や天ぷらで食べる。新鮮な個体では昆布締めも美味である。

漁業

底びき網、刺網、はえ縄、定置網及び釣り等で漁獲されており、漁法別の漁獲量の割合は比較的安定している。底びき網漁船はかけまわし及び板びきにより操業している。刺網等のほかの漁業種も含め、漁船は19トン以下の小型船がほとんどである。


あなたの総合評価

資源の状態

 本系群の漁獲量は、1980年代中頃まで1,700~4,200トンの間で、1989年に過去最高(5,200トン)となった後1992~2004年までは1,000~2,100トンの間で周期的に変動した。2005年以降は概ね3,000トン前後で推移していたが、2015年以降減少し2017年は2,500トンとなった。2017年の親魚量から資源水準は高位、最近5年間の資源量の推移から、動向は増加と判断された。資源評価結果は毎年公開の会議で外部有識者を交えて協議されるとともにパブリックコメントにも対応した後に確定され、公表されている。現状の漁獲圧(Fcurrent)はFlimit(Fmed)よりも低く、現状の漁獲圧が続いた場合2024年の資源量は増加すると予測される。資源評価結果を受けて設定された生物学的許容漁獲量(ABC)、並びに予防的措置は漁業管理方策に反映されていない。産卵期の成魚が主な漁獲対象であり、若齢魚への漁獲圧は低く、特段の漁業管理方策は策定されていない。



生態系・環境への配慮

 マダラ日本海系群を漁獲する漁業の生態系への影響の把握に必要となる情報、モニタリングの有無について見ると、マダラの生態、資源、漁業等については関係県、水産機構等で調査が行われ成果が蓄積されている。当該海域では各県調査船による水温、塩分等の調査が定期的に実施されている。評価対象漁業から魚種別漁獲量を把握できる体制にあるが、混獲非利用種や希少種について漁業から情報収集できる体制は整っていない。
 マダラを漁獲する漁業による他魚種への影響として、混獲利用種(小型底びき網ではニギス、ホッコクアカエビ、ハタハタ、刺し網ではヒラメ、マガレイ、ウスメバル、ズワイガニ、はえ縄ではホッケ)のうち、ヒラメ、マガレイ、ホッケの資源が懸念される状態であった。混獲非利用種としては小底では大部分はキタクシノハクモヒトデであるが混獲による悪影響が懸念される状況ではなかった。刺し網、はえ縄についてはデータがなかった。生息域が評価対象海域と重複する希少種に関しては、アカウミガメでリスクが中程度とみられたが、その他の希少種ではリスクは低いと判断されたことから、全体的に対象漁法が希少種に及ぼすリスクは低いと考えられる。
 食物網を通じたマダラ漁獲の間接影響について、マダラ自身が高次捕食者であるため当該海域においてはマダラの捕食者は見当たらない。また、競争者についても見当たらない。マダラの餌生物と考えられるハタハタ、ムシガレイ、ホッケ、ニギスのうちホッケの資源状態が懸念されるがホッケの資源変動は環境要因に影響されている可能性がありマダラによる捕食が影響を与えているとはいえなかった。
 漁業による生態系全体への影響について、日本海北区では総漁獲量及び漁獲物平均栄養段階(MTLc)ともにここ10年以上の年変動は安定して推移していることから、対象漁業が生態系全体に及ぼす影響は小さいと推定された。
 漁業による環境への影響のうち海底環境については、はえ縄、刺し網の影響は軽微であると考えられる。小型底びき網は、漁業の規模と強度の規模は重篤ではないが、栄養段階組成の年変動が安定的に推移していないことから漁場の一部での海底環境の影響が懸念された。水質への影響については、対象漁業からの排出物は適切に管理されており、負荷は低いと判断された。大気への影響については、小型底びき網、刺し網の負荷は軽微、はえ縄は他漁業からの類推から悪影響が懸念されないとはいえないと判断した。



漁業の管理

 マダラ日本海系群を漁獲する沖合底びき網、小型底びき網漁業は大臣及び県知事許可漁業、刺し網、はえ縄漁業も県知事許可漁業で、前者の一部は漁業権行使、後者の一部は広域漁業調整委員会承認漁業か少数が自由漁業として操業している。TAC魚種ではなく、アウトプット・コントロールはなされていない。テクニカル・コントロールについては、知事許可漁業でないはえ縄漁業を除いては操業禁止区域等の一定の規制が課せられている。環境等への漁具による影響を軽減する規制は導入されており、生態系の保全・再生活動が活発に行われているか、もしくは陸上の人間活動が対象資源の持続性に影響しないと考えられる。広域魚種として広域漁業調整委員会でも議論され、生息域をカバーする管理体制が機能している。沖合底びき網漁業は国、ほかの県知事許可と自由漁業は県が主体に取締りを実施し、法令違反に対する罰則規定は有効である。国の資源管理指針でも取り上げられTAC等対象種を除くほかのABC算定対象種に先んじて、順応的管理の仕組みが部分的にも導入されてきている。自由漁業のはえ縄の比率はかなり小さく、実質すべての漁業者は特定でき、また自由漁業を含めて実質すべての漁業者は漁業者組織へ所属している。各漁業種類は漁業協同組合等の単位で休業等を内容とする資源管理計画を実施している。経営改善や流通販売に関する活動は各県の漁業者組織で全面的に実施されている。自主的及び公的管理への関係者の関与や、利害関係者の参画についても遊漁者等の関与は高く評価された。資源管理計画の評価・検証の協議は十分行われていないと評価された。



地域の持続性

 日本海系群のマダラは、沖合底びき網(秋田県)、小型底びき網(秋田県、山形県、新潟県、石川県)、その他の刺し網(新潟県、石川県)、その他のはえ縄(秋田県、石川県)で大部分が獲られている。漁業収入は中程度で推移し、収益率のトレンドは高く、漁業関係資産のトレンドは低かった。経営の安定性については、収入の安定性、漁獲量の安定性ともに中程度であった。漁業者組織の財政状況は未公表の組織も含まれた。操業の安全性は高かった。地域雇用への貢献はやや低かった。労働条件の公平性については、漁業及び加工業で特段の問題はなかった。買受人は各市場とも取り扱い数量の多寡に応じた人数となっており、セリ取引、入札取引による競争原理は概ね働いている。取引の公平性は確保されている。卸売市場整備計画により衛生管理が徹底されており、 仕向けは高級消費用である。先進技術導入と普及指導活動はおおむね行われており、物流システムは整っていた。水産業関係者の所得水準は中程度である。地域毎に特色ある漁具漁法が残されており、伝統的な加工技術や料理法がある。



健康と安全・安心

 マダラには、タウリンが多く含まれている。タウリンは、アミノ酸の一種で、動脈硬化予防、心疾患予防等の効果を有する。旬は12月~2月である。また、肝臓に含まれる肝油にはビタミンAとDが多い。ビタミンAは、視覚障害の予防に効果があり、ビタミンDは骨の主成分であるカルシウムやリンの吸収に関与している。利用に際しての留意点は、生食によるアニサキス感染防止である。アニサキスは、魚の死後時間経過にともない内臓から筋肉へ移動するため、生食には新鮮な魚を用いること、内臓の生食はしない、冷凍・解凍したものを刺身にする等で防止する。また、鮮度低下が早く、臭気の発生や冷凍保管中の劣化が起こりやすいため取り扱いには気をつける。
引用文献▼ 報告書