Sustainable, Healthy and “Umai” Nippon seafood project

サスティナブルでヘルシーな
うまい日本の魚プロジェクト

Yellow striped flounder(Hokkaido prefecture, Sea of Okhotsk)

カレイ目カレイ科に属し、学名はPseudopleuronectes herzensteini。体は楕円形で、強く側偏する。体長は体高の2倍以上。両眼は右体側にあり、両眼の間にうろこはない。口は小さく左右不相称で、多少前方に伸び、下あごがやや突き出る。歯は門歯状。側線は胸びれの上方で湾曲する。有眼側は青みを帯びた黒褐色。無眼側は白色で、体の後半の背縁と腹縁に沿って淡黄色の帯がある。

分布

日本海では朝鮮半島からサハリン西方のタタール海峡北部まで、オホーツク海ではサハリン南東岸から北海道東岸に沿って南千島まで、太平洋では南千島から北海道と本州東岸に沿って房総半島まで広がる。周年にわたり主に水深150mより浅い大陸棚上に分布し、砂質から砂泥質の海底に多い。

生態

寿命は、雄が5歳程度、雌が10歳以上と考えられている。雌では2歳から、雄では1歳から成熟する個体が見られる。成長には雌雄差や地域差があり、同一年齢での個体差、同一海域での年級群間の差も大きい。産卵期は4~6月で、産卵場は石狩湾と苫前沖~利尻・礼文島周辺海域(産卵水深は40~60 m)である。仔魚はカイアシ類を、未成魚や成魚はゴカイ類、二枚貝類、ヨコエビ類、クモヒトデ類等を主に捕食している。

利用

肉質は上質で弾力があり、カレイ類のなかでは一級品。煮付け、刺し身、焼き魚はいずれも美味。特に春先の子持ちの雌は煮付けにすると良い。秋には餌を食べ丸々と太っているので、新鮮なものを刺し身にすると最高。

漁業

本系群は主に刺網漁業等の沿岸漁業によって漁獲されるほか、沖合底びき網漁業(沖底)によっても漁獲されている。刺し網の主漁期は日本海で10~6月、オホーツク海で5~12月である。また、日本海では主に成魚が漁獲されるのに対し、オホーツク海では主に未成魚が漁獲され、漁獲量は日本海が約6割を占めている。沿岸漁業においては、主にかれい刺し網により漁獲されている。沖底では現在使用されている船の大きさは100トン以上であり、かけまわしおよびオッタートロールが行われている。


あなたの総合評価

資源の状態

 マガレイ北海道北部系群には日本海北部で産卵されたものが、そこで着底し一生を過ごす群(日本海育ち群)と、オホーツク海へ運ばれて着底し、そこで未成魚期を過ごした後、成熟の進行にともない日本海北部へ産卵回遊する群(オホーツク海育ち群)が存在し、これらの群間での成長や成熟には差異が認められている。漁獲量は1988年以降増加し、1997年には4,000トンに達したが、その後は増減しながら長期的には減少傾向にある。本系群に対する沖底の単位努力量当たり漁獲量(CPUE)の幾何平均値は1990年代後半からは増減を繰り返しながらも比較的安定して推移したのち、2013年以降は再び増加傾向となっている。漁獲量と資源量指標値が利用できることから、資源水準および資源量指標値の変動傾向に合わせた漁獲を行うことが管理方策とされ生物学的許容漁獲量(ABC)が算定されている。資源評価結果は公開の会議で外部有識者を交えて協議されるとともにパブリックコメントにも対応した後に確定されている。資源評価結果は毎年公表されている。



生態系・環境への配慮

 マガレイ北海道北部系群を漁獲する漁業の生態系への影響の把握に必要となる情報、モニタリングの有無について、生態、資源、漁業等については北海道立総合研究機構等で調査が行われ成果が蓄積されており、日本海、オホーツク海の海洋環境については道総研・稚内水産試験場、水産機構・北海道区水産研究所によって調査・研究が進められて来た。対象漁業による魚種別漁獲量は把握されているが、混獲非利用種や希少種について漁業から情報収集できる体制は整っていない。
 評価対象種を漁獲する漁業による他魚種への影響について、混獲利用種は、刺し網ではホッケ、ソウハチ、アカガレイ、クロガシラガレイ、ヒレグロ、沖合底びき網ではスケトウダラ、マダラ、ニシン、ソウハチ、アカガレイ、クロガシラガレイ、ヒレグロ、ホッケ、イカナゴと考えられたが、これらのうちスケトウダラ、ホッケ、イカナゴ類の資源状態が懸念される状態であった。混獲非利用種は、刺し網ではカジカ類、ソイ類のうちカジカ類の資源状態が減少傾向と推測された。沖合底びき網では情報がなく評価不能であった。環境省レッドデータブック掲載種の中で生息域が評価対象海域と重複する動物に対し評価を行ったが、刺し網、かけまわしともに漁業が及ぼすリスクは低いと考えられた。
 食物網を通じたマガレイ漁獲の間接影響について、マガレイの捕食者は不明であり評価できなかった。マガレイの主な餌料はゴカイ類、二枚貝類、ヨコエビ類、クモヒトデ類等であるが、ベントス類の豊度に関するデータはないものの、ほぼ漁業の対象ではないと考えられるため混獲の影響は無視でき、さらにマガレイの資源動向は比較的安定しており餌生物への捕食圧の定向的な変化も考えにくかった。クロガシラガレイ、ヒレグロを対象海域におけるマガレイの競争者ととらえたが両種には資源の懸念は見られなかった。生態系全体への漁業の影響であるが、2004~2017年の漁獲物平均栄養段階(MTLc)の変動は顕著ではなく、当該海域では刺し網と沖底1そうびき漁業が生態系全体に及ぼす影響は小さいと考えられた。
 海底環境への影響については、漁業の規模と強度の影響は重篤ではないが、沖底1そうびき(かけまわし)漁獲物のMTLcに低下傾向が認められたことから、生態系特性に変化が懸念される状況であった。水質への影響については、評価対象海域での底びき網での環境関連法令違反の検挙例は見当たらなかったことから排出物は適切に管理されており水質環境への負荷は低いと判断される。大気への影響については、沖合底びき網1そうびきは我が国のほかの漁業と比較して低いCO2排出量となっていたため排出ガスは適切に管理され、大気環境への負荷が軽微であると判断される。



漁業の管理

 マガレイ北海道北部系群を漁獲する沖合底びき網漁業は、農林水産大臣許可漁業であり、刺網漁業は北海道知事の許可あるいは共同漁業権の漁業であり、漁獲量の上限は設定されていない。両漁業には操業時期、漁具の制限等がある。沖合底びき網漁業は沖底禁止ラインが設定され、かけまわし漁法は開口板を使用しない。刺網漁業では、サケ、マス、カニが漁獲された場合には海中還元が許可の制限条件となっている。生態系の保全・再生活動が活発に行われている。国、県の管理体制、漁業者組織も確立し、生息域をカバーする管理体制が機能している。沖合底びき網漁業については魚種別に資源管理を行うことはなされていないが、北海道の資源管理指針でカレイ類では資源の維持を目標に、刺網漁業では休漁、漁獲物管理等に取り組む必要があるとし、資源評価を継続し、北海道では水産資源管理マニュアルを作成している。資源管理指針に基づき各漁業では休業等を内容とする資源管理計画を実施し、漁獲物規制(小型魚の保護)の措置にも取り組んでいる。北海道機船漁業協同組合連合会では地域プロジェクト改革計画を主導し、業種別組合や沿海漁業協同組合では通販や直営店が運営されている。自主的および公的管理への関係者の関与や利害関係者の参画についても比較的高く評価される。管理施策の意思決定については、特定の関係者での資源管理計画の評価・検証により計画が作成され、実施者の漁業者が参加していないことから協議は十分行われていないと評価した。



地域の持続性

 北海道北部系群のマガレイは、北海道の刺し網と沖合底びき網で大部分が獲られている。漁業収入はやや低く、収益率と漁業関係資産のトレンドについては、中程度であった。経営の安定性については、収入の安定性、漁獲量の安定性ともに中程度であった。漁業者組織の財政状況は未公表の組織も含まれた。操業の安全性は高かった。地域雇用への貢献は高い。労働条件の公平性については、漁業及び加工業で特段の問題はなかった。買い受け人は各市場とも取扱数量の多寡に応じた人数となっており、セリ取引、入札取引による競争原理は概ね働いており、取引の公平性は確保されている。卸売市場整備計画により衛生管理が徹底されており、仕向けは高級消費用及び中級消費用である。先進技術導入と普及指導活動は概ね行われており、物流システムは整っていた。水産業関係者の所得水準は比較的高かった。地域ごとに特色ある漁具・漁法が残されており、伝統的な加工技術や料理法がある。



健康と安全・安心

 マガレイの肉は良質なタンパク質を含み、縁側には皮膚の健康を保つ働きがあるコラーゲンが含まれている。一般的に、カレイ類には、体内でエネルギー変換に関与しているビタミンB1、骨の主成分であるカルシウムやリンの吸収に関与しているビタミンDが多く含まれている。旬は、6~9月である。
引用文献▼ 報告書