Sustainable, Healthy and “Umai” Nippon seafood project

サスティナブルでヘルシーな
うまい日本の魚プロジェクト

Queen crab(Iwate prefecture)

十脚目ケセンガニ科に属し、学名はChionoecetes opilio。甲はやや扁平。甲の側縁寄り後方に平行な二列の顆粒列がある。甲幅と甲長の比はほぼ1:1。雌はやや脚が短い。甲や脚の腹側は白っぽい。

分布

島根県以北の日本海、茨城県以北の太平洋、北海道、朝鮮半島東岸、オホ-ツク海、ベーリング海、アラスカ湾に分布。太平洋北部では、青森県~茨城県沖の水深150~750mに分布し、分布密度は宮城県~福島県沖で高い。

生態

寿命は10歳以上。本系群の50%成熟サイズは雄で甲幅78.6mm、雌で甲幅65.8mmであり、雄の成熟サイズは日本海系群よりも小さいが、雌の成熟サイズはほぼ同じである。産卵期および産卵場の詳細は不明であるが、ふ化が近い外仔を有する雌は冬~春に多く採集される。太平洋北部での食性は不明である。

利用

農林水産省令により、雄では甲幅80mm以上、雌では成熟個体のみが漁獲される。太平洋北部では福島県沖での漁獲量が多く、茹でガニ、焼きガニ、しゃぶしゃぶなどで食べる。本系群のブランド化は進んでおらず、日本海側に比べて単価が安い。

漁業

沖合底びき網漁業(沖底)により青森県~茨城県沖で漁獲されるが、宮城県以南のオッタートロール漁法による漁獲が大部分を占める。
福島県沖が主漁場であるが、東日本大震災後、漁獲量は大きく減少している。福島県では1975~1980年頃からズワイガニの漁獲を開始し、1990年代半ば以降には太平洋北部全体の漁獲量の大部分を福島県船が漁獲している。しかし、ズワイガニを選択的に漁獲する専業船は少なく、他の魚種とともに漁獲対象の一つとして扱われている。


あなたの総合評価

資源の状態

 着底トロール調査により推定した資源量は、1997~2007年漁期に496~1,777トンの間を変動した後、減少傾向となった。2012年漁期には1,141トンと2011年漁期より増加したが、2013~2014年漁期の資源量は前年比で減少し、2014年漁期には350トンと過去最低となった。しかし、2015年漁期には資源量は905トンに増加したことから、資源水準は中位、資源動向は横ばいと判断される。現状の漁獲圧は極めて低く、現状の漁獲圧で資源の維持および増大が可能であり、加入量の不確実性を考慮した将来予測の結果より、資源が枯渇するリスクは極めて低いと考えられる。以上の情報については、国の委託事業として水産研究・教育機構、関係府県により毎年調査され更新されている。資源評価結果は、公開の会議で外部有識者を交えて協議されるとともに、パブリックコメントにも対応した後に確定されている。資源評価結果は毎年公表されている。



生態系・環境への配慮

 太平洋北区では、農林水産省のプロジェクト研究、水産機構の一般研究課題として長期にわたり調査が行われている。現在Ecopathによる食物網構造と漁業の生態系への影響評価が進められている。当該海域における海洋環境及び低次生産、底魚類などに関する調査は水産機構、関係県の調査船により定期的に実施されている。沖合底びき網漁業からは漁獲成績報告書が提出されているが、記載されない混獲非利用種や希少種について、漁業から情報収集できる体制は整っていない。
 沖底混獲利用種であるマダラ、キチジ、アカガレイのうちアカガレイの資源状態が悪い。混獲非利用種と考えられた生物に対して、深刻な悪影響を与えているとは言えない。環境省が指定した絶滅危惧種のうち、評価対象水域と分布域が重複する種への影響は軽微であると考えられる。
 食物網における間接作用を考慮すると、ズワイガニの捕食者はマダラ、ゲンゲ類、かれい類、ガンキエイ類、ヒトデ類等であるが、生態系モデルEcopathのMixed trophic impactの結果によれば、ズワイガニの捕食者への影響は検出されなかった。ズワイガニの餌生物はベントス類と考えられる。EcopathにおけるMixed trophic impactの結果によれば、ズワイガニが負の影響を及ぼしていた餌生物は検出されなかった。競争者はズワイガニと同じくベントス食性である混獲種のキチジ、アカガレイとした。EcopathにおけるPrey niche overlap indexの結果によれば、ズワイガニと強い競合を示唆した種は検出されなかった。
 生態系全体への影響としては、沖合底びき網漁業の規模と強度は生態系に重篤な影響を及ぼしているとはいえず、漁獲物の栄養段階組成からみて生態系特性に不可逆的な変化は起こっていないと考えられる。海底環境への影響は、沖合底びき網1艘びきのうちズワイガニが主に漁獲されるオッタートロールでは重篤な悪影響が懸念される。水質環境への影響については、対象漁業からの排出物は適切に管理されており、水質環境への負荷は軽微であると判断される。大気環境への影響については、沖合底びき網1艘びきの漁獲量1トンあたりのCO2排出量から、他の漁業種類と比べると低いと判断された。



漁業の管理

 ズワイガニ太平洋北部系群を太平洋北部海域(E海域)で漁獲する主な県と漁業種類は福島県の沖合底びき網漁業である。福島県のズワイガニについては東日本大震災後に安全が確認されて以降試験操業が実施されており、漁獲量は未だ少ないものの2016年に本系群からのほぼ全ての漁獲量を揚げ、検査し、出荷している。大臣許可漁業であるため操業隻数が、またTAC魚種であるため漁獲量の上限が、定められている。省令等により操業海域、漁期や漁獲物の大きさ(甲長)も規制されている。また協定を全漁業者で締結し、TACを自主的にも管理している。



地域の持続性

 太平洋北部のズワイガニは、福島県の沖合底びき網漁業でその多くが獲られている。収益率のトレンドは低く、漁業関係資産のトレンドも低位であった。経営の安定性については、収入の安定性及び漁獲量の安定性は中程度で、漁業者組織の財政状況は高位であった。操業の安全性、地域雇用への貢献は高かった。各県とも水揚げ量が多い拠点産地市場がある一方、中規模市場が分散立地している。買受人は各市場とも取扱量の多寡に応じた人数となっており、セリ取引、入札取引による競争原理はおおむね機能している。卸売市場整備計画により衛生管理は徹底されている。大きな労働災害は報告されておらず、本地域における加工流通業の持続性は高いと言える。先進技術導入と普及指導活動は継続的に行われており、物流システムも整っている。水産業関係者の所得水準は高い。福島県の沖合底びき網漁業は1979年頃からスターン式に移行していったことが認められる。



健康と安全・安心

 ズワイガニには、人間の体内でエネルギー変換に関与しているビタミンB1、細胞内の物質代謝に関与しているビタミンB2、体内の酸化還元酵素の補酵素として働くナイアシン、各種酵素の成分となる亜鉛、抗酸化作用を有するセレン、動脈硬化予防、心疾患予防などの効果を有するタウリンなど、様々な栄養機能性分が含まれている。旬は11月から2月である。
 利用に際しては、カニは特定原材料に指定されているため、取扱い時にはアレルゲンの拡散防止に留意する。特に、加工場で、カニと同じ製造ラインで生産した製品など、アレルゲンの混入の可能性が排除できない場合には、その製品には、注意喚起表示を行う。
引用文献▼ 報告書