サスティナブルでヘルシーなうまい日本の魚プロジェクト

Sustainable, Healthy and “Umai” Nippon seafood project

サスティナブルでヘルシーな
うまい日本の魚プロジェクト

キンメ(千葉県)

キンメダイ目、キンメダイ亜目、キンメダイ科に属し、学名は Beryx splendens。体は側扁し、頭は大きい。眼は著しく大きくて、黄金色に輝く。

分布

太平洋、大西洋、インド洋の熱帯から温帯域の海山および大陸棚縁辺部に世界的規模で分布する。日本では、北海道釧路以南の太平洋と新潟県以南の日本海に分布する。

生態

未成魚は大陸棚の水深100~250m、成魚は沖合の水深200~800mに分布する。我が国太平洋岸における主な生息域(漁場)は房総半島から伊豆半島沿岸、御前崎沖、伊豆諸島周辺、四国沖、南西諸島周辺海域などである。関東地方の沿岸部からの小型魚の標識放流結果によると、放流海域付近にとどまるものと、伊豆諸島などのより深い水深の海域に移動するものがいることが示唆されている。沿岸の大陸斜面上部には若齢の小型魚が多く、伊豆諸島や海山等の沖合の深場には高齢の大型魚が多い傾向がある。長距離の移動では、関東沿岸で放流した個体が伊豆小笠原海嶺を南下、また南西諸島周辺海域で再捕された個体の例がある。

利用

肉は柔らかいが味はたんぱくであり、煮付けや鍋料理にするほか、味噌漬け・かす漬けにする。

漁業

 キンメダイは陸棚斜面や海山、海丘の斜面や頂上に多く分布し、房総半島から南西諸島に至る太平洋岸、伊豆諸島、沖合の海山周辺に漁場が点在する。主に自由漁業、知事許可漁業として立て縄、底立てはえ縄、樽流しといった釣で漁獲されている。また大臣許可漁業としては、東シナ海区ではえ縄漁業、太平洋南区、中区、北区で沖合底びき網漁業による漁獲があるが総漁獲量に占める割合はごくわずかである。
 主要漁業は立て縄漁業と底立てはえ縄漁業である。千葉県、東京都、神奈川県、静岡県(以下、一都三県)の立て縄漁業は20トン未満の漁船で日帰り、または2~3日の泊り操業が中心である。静岡県の底立てはえ縄漁業は19~99トンの大型船で1週間~10日ほどの操業を行う。


あなたの総合評価

資源の状態

 キンメダイは一都三県の沿岸や島嶼部を中心に漁獲される重要種であり、毎年コホート解析により年齢別資源量が算出されている。コホート解析に必要な漁獲量、年齢組成、さらに次年度の資源量予測に必要となる年齢別成熟割合、近年の再生産成功率、加入量等のデータは国の委託により水産機構、関係都道府県により毎年調査され更新されている。2018年現在、資源の水準は低位で、資源の動向は減少傾向にある。資源量、親魚量とも減少傾向であり、将来予測では、現状の漁獲圧が継続すると資源はさらに減少することが示唆されている。資源評価結果は公開の会議で外部有識者を交えて協議されるとともにパブリックコメントにも対応した後に確定されている。資源評価結果は毎年公表されている。



生態系・環境への配慮

 キンメダイ太平洋系群を漁獲する漁業の生態系への影響の把握に必要となる情報、モニタリングの有無について、生態、資源、漁業等の調査が行われており一定の知見が蓄積されているが、深海の生態系に関する情報は少ない。深海の海洋環境等についての調査も断片的である。当該海域では水温、塩分等の調査については水産機構、及び各都県の調査船による沖合定線調査等により定期的に実施されている。漁業種類別の漁獲量については農林水産省統計部によって調査されているが、混獲非利用種や希少種について、漁業から情報収集できる体制は整っていない。
 キンメダイを漁獲する漁業による他魚種への影響について、混獲利用種はヒレタカツノザメ、ハナフエダイ、メヌケ、その他サメ類などと考えられるが、これらの魚種の動向を判断するデータは存在せず評価不能であった。対象漁業は深海の釣り漁業であるため魚類以外の混獲種は考えにくく混獲非利用種は存在しないと考えられる。環境省のレッドデータブック掲載種の中で、生息域が重複する動物の中でコアホウドリに対するリスクが中程度となったが、キンメダイの釣り漁業と希少種との遭遇率は低く、全体的にリスクは低いと考えられる。
 食物網を通じたキンメダイ漁獲の間接影響について、捕食者と考えられるヨゴレ、ガラパゴスザメ、クロトガリザメ、ハンドウイルカのうちヨゴレ、クロトガリは資源が懸念される状態にあった。キンメダイの餌生物はオキアミ類、チヒロエビ類、ハダカイワシ類等であるが、漁業の対象ではないため混獲の影響は無視でき、キンメダイによる捕食圧の増大もないと考えられる。競争者はヒレタカツノザメ、ハナフエダイ、メヌケ、その他サメ類等と考えられるがキンメダイ漁業の影響の程度を判断するデータは存在しない。漁業による生態系全体への影響については、2004~2017年の総漁獲量と漁獲物平均栄養段階(MTLc)は太平洋中区では安定して推移していることから、釣り漁業が生態系全体に及ぼす影響は小さいと推定された。
 漁業による環境への影響については、立て縄、底立てはえ縄、樽流しといった釣り漁業は、海底面をひき回す操業形態ではないため影響は軽微であると考えられる。水質への影響については、環境関連法令違反について釣り漁業の検挙例を個別に判断する資料は見当たらず評価ができなかった。大気環境に対しては、他漁業からの類推・比較から影響は軽微とまではいえないと考えられた。



漁業の管理

 キンメダイ太平洋中部を漁獲する底立てはえ縄漁業は知事許可漁業で定数管理されており、立て縄漁業は自由漁業であるが地域の漁業者組織でも管理されている。インプット・コントロールはなされているがアウトプット・コントロールは導入されていない。公的規制のほか、小型魚の再放流、漁具の制限等が自主的に実施されている。釣り漁業であり海底を改変させるような漁業ではない。漁場等においてゴースト漁具は自主的に回収に努めるものとされている。キンメダイは広域魚種であり、生息域をカバーする広域漁業調整委員会を含めた一元的な管理体制が確立して機能している。都県の漁業取締船を主体に隣接県等と連携して漁業取締が実施されており、公的な監視とともに、地域の漁業者団体の「とも監視」がなされ罰則規定もある。自由漁業である立て縄漁業を含めて実質すべての漁業者は漁業者組織へ所属している。一都三県キンメダイ資源管理実践推進漁業者協議会等で公的規制を上回る資源管理施策が協議されてきており、資源管理計画では漁獲物制限等を課している。ブランド化、直販所運営等による流通販売活動が漁業者組織で実施されている。遊漁者等も海面利用協議会に参画している。種苗放流は実施されておらず、その効果を高める措置や費用負担への理解については評価できない。



地域の持続性

 太平洋中部のキンメダイは、一都三県の立て縄釣り漁業と、底立て縄漁業(神奈川県、静岡県)で大部分が獲られている。漁業収入はやや高く、収益率と漁業関係資産のトレンドは高かった。経営の安定性については、収入の安定性は高く、漁獲量の安定性はやや高かった。漁業者組織の財政状況はすべて黒字であった。操業の安全性は高かった。地域雇用への貢献は高い。労働条件の公平性については、漁業及び加工業で特段の問題はなかった。買受人は各市場とも取扱数量の多寡に応じた人数となっており、セリ取引、入札取引による競争原理は概ね働いている。取引の公平性は確保されている。卸売市場整備計画により衛生管理が徹底されており、 仕向けは高級消費用である。先進技術導入と普及指導活動は概ね行われており、物流システムは整っていた。水産業関係者の所得水準はやや低い。地域ごとに特色ある漁具漁法が残されており、伝統的な加工技術や料理法がある。



健康と安全・安心

 キンメダイの脂質には、血栓予防や高血圧予防等の効果を有する高度不飽和脂肪酸であるEPAと、脳の発達促進や認知症予防等の効果を有するDHAが豊富に含まれている。旬は12~3月である。利用に際しての留意点は、他の魚種に比べメチル水銀を蓄積しやすいことである。妊婦は、厚生労働省より公表されている目安量を基に摂取する必要がある。
引用文献▼ 報告書