サスティナブルでヘルシーなうまい日本の魚プロジェクト

Sustainable, Healthy and “Umai” Nippon seafood project

サスティナブルでヘルシーな
うまい日本の魚プロジェクト

マダラ(茨城県)

タラ目、タラ科に属し、学名はGadus macrocephalus。頭が大きく、成魚は腹部も大きい。あごの下にひげが1本ある。体は全体的に灰褐色で、背部から腹部にかけてまだら模様がある。

分布

北部太平洋沿岸に広く見られ、我が国周辺では日本海から東シナ海北部、北日本太平洋およびオホーツク海に分布する。太平洋北部系群は青森県尻屋崎から茨城県沖に分布する。

生態

寿命は8歳程度。成熟年齢は満3歳で40%程度で、4歳以上ではほぼ100%だが、年による変化がある。夏季から秋季には水深200m以深の海域に生息するが、冬季になると産卵親魚は水深数十mの浅瀬に移動し、雌雄ペアあるいは一尾の雌に数尾の雄が群がり、砂泥帯に沈性卵を産む。雌は一繁殖期に1回産卵し、その産卵数は79万(3歳魚)~312万粒(5歳魚)である。

利用

孵化後2週間程度の仔魚期から食用として利用され、各成長段階で乾製品に加工される。またカツオ釣獲用の活餌として用いられる。缶詰や塩蔵品にも加工され、地域によっては生食される。

漁業

主に沖合底びき網漁業で漁獲され、次いではえ縄、小型底びき網漁業による漁獲が多い。これらの漁業では周年漁獲されているが、冬に接岸する個体を対象にした定置網や刺網による操業も行われている。満1歳ぐらいから漁獲対象となる。
沖合底びき網漁業では主に19トン型および65トン型の船が用いられている。海域によって漁法が異なり、襟裳西および尻屋崎海区ではかけまわし、岩手海区では2そうびきもしくはかけまわし、金華山海区~房総海区ではオッタートロールが主体となっている。


あなたの総合評価

資源の状態

 マダラは東北地方太平洋岸における重要底魚資源であり、毎年トロール調査によって年齢別資源量が求められ、許容漁獲量(ABC)が産出されている。資源量は1996~2011年には1.3万~6.6万トンで推移していたが、震災以降急増し、2014年には21万トンを超えた。その後やや減少し、2016年には16.5万トンであった。なお、資源評価結果は公開の会議で外部有識者を交えて協議され、毎年公表されている。



生態系・環境への配慮

 太平洋北区は農林水産省のプロジェクト研究、水産機構の一般研究課題として長期にわたり調査が行われている。現在Ecopathによる食物網構造と漁業の生態系への影響評価が進められている。当該海域における海洋環境及び低次生産、底魚類などに関する調査は水産機構、関係県の調査船により定期的に実施されている。評価対象漁業について魚種別漁獲量は把握されているが、混獲非利用種や希少種について漁業から情報収集できる体制は整っていない。
 沖合底びき網漁業の混獲利用種のスルメイカ、スケトウダラのうち、スルメイカは資源状態が悪かった。はえ縄混獲種のスケトウダラの資源は懸念される状況ではない。混獲非利用種について、有意な減少傾向が認められたのは4種のみであり、対象漁業が混獲非利用種に深刻な悪影響を与えているとは言えない。はえ縄漁業については情報不足である。希少種のうち評価対象水域と分布域が重複する種について、両漁法による影響は軽微であると評価された。
 食物網を通じた間接作用であるが、生態系モデルEcopathの解析では捕食者であるアブラガレイへの影響は検出されなかった。餌生物のうち、カタクチイワシとマダラの資源量の間には負の相関関係が見られたががマダラの捕食圧のせいか判断はむずかしい。混獲種の中でマダラと食性が重複するスルメイカ、スケトウダラ、ヒラメを競争者としてCA評価を行った結果、競争による他資源への影響は検出されなかった。
 生態系全体への影響に関して、沖合底びき網漁業については、その模規と強度は重篤な影響を与える範囲とは言えず、当該海域の漁獲物平均栄養段階に大きな定向的な変化は認められない。さらにEcopathでの解析でも1艘びきオッタートロールとかけまわしの影響は小さいとされた。はえ縄については、その漁業の規模と強度は重篤な影響があるとは言えず、当該海域の栄養段階組成の経年変化からも大きな定向的な変化は認められなかった。
 海底への影響は、沖合底びき網漁業の漁法別(1艘びきのオッタートロール、かけまわし、2艘びき)に、操業による撹乱の規模、地形・底質から推定した海底面の回復力および非漁場の面積割合から着底漁業の影響を評価し、さらに調査船データから、多様度指数の変化を基準として、操業が海底環境へ及ぼす影響を評価し一部に影響があるとされた。水質への負荷は軽微であると判断される。大気への影響も軽微と考えられる。



漁業の管理

 マダラは広域魚種として、TAC対象魚種に次いで漁獲量が多く、広範囲にわたり生息し、国民生活上又は漁業上重要な魚種として挙げられ(国作成資源管理指針)、次期TAC魚種候補として説明されている。本海域のマダラは沖合底びき網漁業で漁獲され、自由漁業である岩手県のはえ縄漁業でも漁獲されている。共同管理については、太平洋北部沖合性カレイ類資源回復計画の保護区の設定等措置に引き続き取り組んでいる等のため、比較的高く評価した。



地域の持続性

 マダラ太平洋北部は、沖合底びき網漁業(青森県、岩手県、宮城県、福島県)、その他のはえ縄漁業(岩手県)で多くが獲られている。収益率のトレンドは低く、漁業関係資産のトレンドも低位であった。経営の安定性は、収入の安定性、漁獲量の安定性は中程度で、漁業者組織の財政状況は高位であった。操業の安全性、地域雇用への貢献は高かった。各県とも水揚げ量が多い拠点産地市場がある一方、中規模市場が分散立地している。買受人は各市場とも取扱量の多寡に応じた人数となっており、セリ取引、入札取引による競争原理は概ね働いている。卸売市場整備計画により衛生管理は徹底されている。大きな労働災害は報告されておらず、本地域の加工流通業の持続性は高い。先進技術導入と普及指導活動は行われており、物流システムも整っていた。水産業関係者の所得水準は高い。青森県・岩手県、宮城県では伝統的な料理法が数多く伝えられている。



健康と安全・安心

 マダラには、タウリンが多く含まれている。タウリンは、アミノ酸の一種で、動脈硬化予防、心疾患予防などの効果を有する。旬は12月~2月である。
 また、肝臓に含まれる肝油にはビタミンAとDが多い。ビタミンAは、視覚障害の予防に効果があり、ビタミンDは骨の主成分であるカルシウムやリンの吸収に関与している。
 利用に際しての留意点は、生食時のアニサキス感染防止である。アニサキスは、魚の死後時間経過に伴い内臓から筋肉へ移動するため、生食には新鮮な魚を用いること、内臓の生食はしない、冷凍・解凍したものを刺身にするなどの方法で防止する。また、鮮度低下が早く、臭気の発生や冷凍保管中の劣化が起こりやすいため、取り扱いには気をつける。
引用文献▼ 報告書