サスティナブルでヘルシーなうまい日本の魚プロジェクト

Sustainable, Healthy and “Umai” Nippon seafood project

サスティナブルでヘルシーな
うまい日本の魚プロジェクト

地域の持続性

イカナゴ(和歌山県 瀬戸内海)

漁業生産の状況

 船びき網漁業での漁業収入は、過去10年で上位3年間の漁獲金額の平均と昨年の比率からみるとかなり減少している。収益率は、比較的高い。漁業関係資産は瀬戸内海区の船びき網相当トン数の漁船漁業で求めてみると、減少している。船びき網での収入や漁獲量の安定性は中庸と評価される。総じて近年の漁業経営の基礎となる数値は高くない。なお、同漁業者が属する団体の経常利益総額は黒字で持続的であった。漁業者は地元漁業協同組合員であり、毎日の出漁からは従事者も親族、地元、あるいは近隣自治体からの雇用と考えられ、地域雇用にも貢献している。労働災害や労働条件の公平性に関して大きな問題は報告されていない。

引用文献▼ 報告書

加工・流通の状況

 評価対象地域内の水産加工・流通業は、船びき網に関係する漁獲物以外も取り扱っている。入手可能データの制約上、同漁業による効果のみを抽出して評価することは困難であったため、水産加工・流通業全体を評価した。まず水揚げ港(産地市場)での価格形成については、小規模市場では漁獲物の特性によって仲買人がセリ・入札に参加しない可能性があり、競争原理が働かない場合も生じる。卸売市場整備計画では、取引の公平性・競争性の確保が記載されている。水揚げ等市場情報は仲買人に公平に伝達され、競争の原理が働き、公正な価格形成が行われる。神戸市漁業協同組合ではイカナゴくぎ煮の輸出も試みられた経過がある。イカナゴに輸入関税や非関税障壁は無い。卸売市場整備計画に則り、県・市町村の衛生基準の遵守、また自主的管理認定制度を制定しており、衛生管理が徹底されている。餌料にも向けられる年もあるが、漁獲が少ない年は餌料用はほとんどなく、2017年には生鮮食用向けが約8割、加工品向けが約2割であった。当該地域の水産加工会社数は全国平均を上回っており、雇用に貢献している。大きな労働災害は報告されておらず、労働条件の公平性も比較的高いと想定される。以上より、本地域の加工流通業の持続性は高いと評価できる。

引用文献▼ 報告書

地域の状況

 水揚げ地では、製氷、冷蔵、冷凍施設や道路、空港などのインフラ整備が進んでおり、また、漁労技術・資源管理方策・調理技術の改善・普及が推進されてきた。公共サービス水準の指標となる財政力指標は0.62は全国平均をかなり上回る。データがないため10~20トン未満の経営体の漁船漁業の乗組員平均給与は兵庫県平均給与を下回っていた。文化面については、効率的な機船船びき網漁業が導入された一方で、成魚を主な漁獲対象として、潮流を利用する伝統的な袋待ち網漁業が近接県では継続されており、くぎ煮を友人に送る習慣が生まれ、阪神淡路大震災後に消息を伝える季節の贈りものとして広く定着している。本地域は水産業関係者にとって十分に魅力的な地域ではあると評価できる。

引用文献▼ 報告書