青森県の底建網漁業は知事許可のものと、知事免許による第二種共同漁業権漁業に基づくものがあり、棒受網漁業は道・県知事許可漁業であるが、両漁業とも漁業調整規則により海区漁業調整委員会の意見を聞いた上で操業隻数、操業期間が制限されている。沖合底びき網漁業は大臣許可漁業であり、操業区域によって漁船のトン数別の隻数が定められ、7・8月の禁漁が設定されている。以上、各漁業にインプット・コントロールが働いているが、ヤリイカ対馬暖流系群の資源量は低位・横ばいである。底建網、棒受網はヤリイカ資源に対するテクニカル・コントロールに相当する規制は特段見当たらないが、ヤリイカの産卵特性を考慮し産卵場の造成(青森県)、産卵床の設置(北海道)が行われており、漁業の制御とは異なるが親魚保護と同等の措置が執られていると考えられる。沖底は省令により操業禁止ラインより陸側での操業は禁止されている。これは沿岸漁業との調整という目的があるが、テクニカル・コントロールが一部導入されていると考えられる。
本系群は主に日本海と青森県沖太平洋に分布する広域資源であるが、資源管理は日本海西部海域の資源については日本海・九州西広域漁業調整委員会、日本海北部海域の資源については主に日本海北部会の管轄下にある。青森県の沖底については水産庁漁業取締本部と仙台漁業調整事務所が指導取締を行う。底建網、棒受網については青森県、北海道がそれぞれ日常的に監視・取り締まりを行っている。法令に違反した場合、沖底については漁業法等に基づき刑事罰や許可の取り消しが課せられ、小底、底建網は漁業法、各道県漁業調整規則の規定により免許、許可の取り消しや懲役刑、罰金あるいはその併科となるなど、罰則・制裁はいずれの漁業にとっても十分に有効と考えられる。本種は改正漁業法のもとで策定された資源管理基本方針では、現行の取り組みの検証を行い、必要に応じて取組内容の改善を図り、知事が漁業者による資源管理協定の締結を促進し協定参加者自らによる実施状況の検証、改良、報告が行われるよう指導するとある。このことから順応的管理の仕組みは導入されていると考えられる。
対象となる実質すべての漁業者はそれぞれの漁業者組織に属しており、すべての資源利用者は特定できている。青森県の底建網、棒受網は資源管理指針で自主的な禁漁、休漁の措置を設けることとされており、沖底では太平洋北部沖合性カレイ類資源回復計画で取り組んできた保護区の設定等の自主的な措置を引き継いでいる。これらのことから、多くの漁業者組織は管理に強い影響力を有していると考えられる。
各漁業関係者は、沿海地区漁業協同組合、業種別漁業協同組合、漁業協同組合連合会等の諸会議への参画を通して自主的な資源管理に、また各道県海区漁業調整委員会、広域漁業調整委員会等に委員として参加することで公的な資源管理へ主体に参画を行っている。資源管理に係わる海区漁業調整委員会、広域漁業調整委員会には学識経験者をはじめ幅広い利害関係者が参画している。改正漁業法に基づく資源管理基本方針では関係者による資源管理施策の計画、評価、見直しに関する意思決定過程が示されており、道県の資源管理方針においては自主的に漁業管理の実施状況を検証・改良し、道県としても5年ごとに方針の検討をすることになっており、意思決定機構は存在し施策の決定と目標の見直しがなされている。